出版社内容情報
『ヘンリー四世』で手に負えない少年だったハル王子が、徳も分別もある王「ヘンリー五世」へと成長し、フランス征服に乗り出す。解説 由井哲哉『ヘンリー四世』で手に負えない少年だったハル王子が、徳も分別もある王「ヘンリー五世」へと成長し、フランス征服に乗り出す。解説 由井哲哉
シェイクスピア[シェイクスピア]
著・文・その他
松岡 和子[マツオカカズコ]
翻訳
内容説明
百年戦争のアジンコートの戦い(1415年)前後に焦点を当て、イングランド王ヘンリー五世の生涯を描いた史劇。『リチャード二世』、『ヘンリー四世第一部・第二部』に続く四部作の最終作。ヘンリー五世は前作『ヘンリー四世』で、手に負えない少年・ハル王子として登場していた。その若き王子も『ヘンリー五世』では高貴で勇壮な王に成長し、フランスの征服に乗り出す。
著者等紹介
シェイクスピア,W.[シェイクスピア,W.] [Shakespeare,William]
1564‐1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ37編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている
松岡和子[マツオカカズコ]
1942年、旧満州新京生まれ。東京女子大学英文科卒業。東京大学大学院修士課程修了。翻訳家・演劇評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
125
傑作。ヘンリー五世(1413-1422)。各幕の前にくるコーラスのもたらす素晴らしい効果。観客、読者ともに、その心はアジャンクールに連れていかれ、ひろがる光景を心に刻む。その勇壮な語りとは対照的な、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの兵士たちのたどたどしい言葉、現地でまみえるフランス兵との噛み合わない会話は、フォルスタッフ亡き後の緊張緩和を担う。イギリス王ハルとフランスのキャサリンとの会話も含め、通じない言葉での会話が全体を通してあり、2人の結婚がconformityをうむという演出かな。2022/01/02
ケイ
108
この幕切れよ…しかし、各幕の始まりごとに観客を場面転換に誘うコーラスや、幕後の余韻をヘンリー六世の悲劇に向かわせたり、上演当時にエリザベス一世がエクセターに託したアイルランド討伐へとつなげるコーラスを実際に耳にしたならば、また印象は違うのだろう。さて、ヘンリー五世はイギリスをフランスに勝利させた英雄か、市井の意見を汲み上げる徳のある人物か、あるいは酒場の中を切捨て捕虜の皆殺しを命じる冷酷で計算高い男か。アヒルとウサギの騙し絵のように、見方によって違う姿でうつるハル。アンビバレントな王位なり。2023/06/28
ケイ
107
シェイクスピアの素晴らしさはなんと言ってもコーラスにあると思うのだ。舞台が始まる前、幕間(この時代に幕自体はなかったようだが)、そして最後。観客の想像力を掻き立てる話術は見事。考えてみれば私の好きな落語も、語りから想像力に訴えるものだから、根本は同じかもしれない。フランスとの戦争や、謀叛のもの達との場面は緊張感を高めるが、ヘンリー五世が身分を隠してウェールズやスコットランドの兵士らとする会話でそれが緩む。しかし、彼らとの会話がしばしば真理をつく。2022/04/02
鐵太郎
28
この翻訳で、通算三冊目か。かつて「我ら幸いなる小数」という言葉を海洋冒険小説で知って以来、シェイクスピアのこの戯曲には特別な関心を持っていたもの。内容の重厚さや人物の運命の綾やきらめく言葉を求めてというより、読んで元気になるために、かな。でも今回読んで気づいたのは、ヘンリー五世王の持続する意志の強さ。身内だった裏切り者やフランス兵捕虜の処刑など、シェイクスピアがこの王にどんな姿を求めたのか、考えると不思議。そして、翻訳者の差ってすごい。2019/08/21
歩月るな
18
「対フランス戦の王軍はイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの連合軍で、彼らが一致団結してヘンリー五世に従うと言う構図である。だがその内実はどうか。」という訳者解説の通り、物語の根幹は一筋縄で諒解できる状況のものではないのだが、併せてコーラスの語りの通り、後嗣ヘンリー六世の物語はすでに繰り返し上演されていると言う事を逆手に取った、いわゆるゼロの物語でもある。その点は由井氏の解説の表現にも繋がる。英雄譚と見せて戦闘を直接描写しない思い切りの一方、過去の登場人物たちが去っていくその趨勢が儚い。2019/01/19
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