出版社内容情報
従兄弟ボリングブルック(のちのヘンリー四世)の復讐心から、屈辱のうちに暗殺された脆弱な国王リチャード二世の悲痛な運命を辿る。解説 前沢浩子
内容説明
イングランド国王リチャードは、宿敵である従兄弟ボリングブルック(のちのヘンリー四世)を追放したあげく、その父ジョン・オヴ・ゴーントの財産を没収する。しかし、復権をねらって戻ってきたボリングブルックに王位を簒奪され、屈奪のうちに暗殺される。脆弱な国王リチャード二世の悲痛な運命を辿る。
著者等紹介
シェイクスピア,W.[シェイクスピア,W.] [Shakespeare,William]
1564‐1616、イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ37編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている
松岡和子[マツオカカズコ]
1942年、旧満洲新京生まれ。東京女子大学英文科卒業。東京大学大学院修士課程修了。翻訳家・演劇評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
133
シェイクスピアの時代に、王とはどういうものであったのか。当時の物事を捉える階位を念頭に再読すると面白さが見えてきた。王は、鳥でいえば鷹、海ではイルカ、動物ならライオン、花なら薔薇。だから、王が憂鬱になる時には、雲が現れ太陽を隠す。1番上にいる王の地位を奪うものは神の怒りをかう。だからヘンリー四世となったボリングブルックの世は落ち着かず、孫の六世に呪いがふりかかった。階位を意識して登場人物たちの会話を読んでいくと、不遜な事を言う人達がなんと多いことか。ボリングブルックになびいた者たちも覚悟せよ、と思う。2022/04/01
ケイ
124
エドワード三世には世継ぎとなる男子が4人。長男のエドワード黒太子が早くに亡くなり、その子が10歳でリチャード2世(1377- 1399年)として即位し、黒太子の弟3人が摂政のような政治に。しかし、3人の中のジョン・オブ・ゴーント ランカスター公の息子は、謀反を起こし、リチャード二世を廃して自らヘンリー四世としランカスター朝の1代目に。結局この3人の子孫から、ヨーク朝、チューダー朝が始まる。このやり方で、王族が血塗られる予言めいた描写も。ヨーク公の息子、オーマール公の今後が気になる。2021/12/31
ケイ
105
同時代の寵児クリストファー・マーロウ(酒場の喧嘩で死亡したあとは、Shakespeareの天下)のエドワード二世の終盤で、その息子のエドワード三世がマキャベリアン的モーティマーに挑もうという強さをみせるが、この人の孫がリチャード二世。そういう言い方をすればボリングブルックもリチャード三世の孫だから、モーティマーよりは王位を求めることに不当性はない。それでも、リチャード二世に対して起こした謀反からうまれる不穏さが予感される。この不穏さの描写がShakespeareの醍醐味だと改めて思う。2023/06/24
優希
81
王権の争いとリチャード二世の悲しい運命の物語でした。宿敵であるボリンブルックを追放したがために悲劇が生まれたのだと思います。追放だけならまだしも、ボリンブリックの父親の財産まで奪い取るのですから、リチャード二世は自分の権力を力で示したかったのでしょう。それが仇となり、復権を狙い戻って来たボリンブリックに報復を受ける。王位を奪われ、屈辱の中で暗殺される悲劇の反乱に引き込まれます。リチャード二世は権力が失われることを畏れ続けた脆弱な王であり、王でないと自分を誇れなかったのかもしれません。面白かったです。2016/01/05
Gotoran
54
廃位された国王『リチャード2世』の悲衰を描いた英国史劇。傲慢から卑屈へ、希望から絶望へ、愛情の浪費から憤怒の苦悶へ、飾った諦念から悲痛な呪詛へと豹変するリチャード2世であった。リチャード2世の急降下と王座を簒奪するヘンリー・ポリングブルック(後のヘンリー4世)の対比からリチャード2世を悲劇の主人公とみるか、見方を変えればポリングブルックの狂言回しとも解釈することができる。松岡訳のテンポ良い言葉遣いで読み易かった。2018/05/30