ちくま文庫
鉄道廃墟―棄景1971

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  • サイズ 文庫判/ページ数 219p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784480039729
  • NDC分類 686.21
  • Cコード C0172

内容説明

野ざらしとなった車両、草むした中に伸びる線路など、カメラマン自らが「棄景」と呼ぶ光景を捉えた写真&エッセイ。かつて近代化の響きを地上に轟かせた列車たちの痕跡がなまなましく残る風景や、幻想のかなたに甦る人間の記憶ともいうべき画像の数々。70年代以降、東京を含め日本各地に残っていた鉄道廃墟を写しとった、危険な魅力に満ちた一冊。

目次

序にかえて―東京郊外・小田急線K駅界隈(一九七一年)
黄色い都電の走った風景―東京都電1000形(一九九〇年)
まぼろしの市街電車―豊橋鉄道300形(一九八二年)
ロープウェイの少女―小河内観光開発(一九九〇年)
本物のつまった箱―国鉄オハフ61形客車(一九九五年)
透明な汽車―天竜浜名湖鉄道天竜二俣駅(一九八八年)
いつか通った雪の街―越後交通長岡線(一九九四年)
百年前に造られたトンネル―東海道本線石部隧道(一九九三年)
廃墟の蛾―国鉄丸山変電所(一九八七年)
避暑地に行くまでに見えたもの―信越本線碓井第六橋梁(一九八七年)〔ほか〕

著者等紹介

丸田祥三[マルタショウゾウ]
1964年東京都新宿区生まれ。71年和光小学校入学。87年和光大学卒業。映画会社の東映に勤務ののち写真家に。主に廃墟、少女、懐かしい町なみを撮影。94年日本写真協会新人賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヤスヒ

11
1970年以降に撮られた鉄道中心の廃墟写真とエッセイが収められている一冊。廃車になった車体、廃線跡、廃駅跡、そして風景…懐古趣味というわけではないが見ているとやはり魅入ってしまう。著者の文章もただの解説だけにとどまらずかつてその鉄道が活躍していた頃の時代背景、また著者自身が写真を撮った当時の状況等、色々な切り口で書かれているのが興味深い。ついついその列車が走っていた時代を想像してしまう。それにしても本を手にとって驚いたのが著者の出身校が同じだった事。先輩だったらしい。ちょっと嬉しくなったりした。2012/08/31

カール

6
朽ち果てた列車。廃線となった線路。崩れ落ちた橋。撮られた写真は空虚さを漂い、被写体は今にも消え去ろうとしている。「ノスタルジー」というにはあまりにも冷たい。そして写真と共に連なる文章がまた秀逸で、写真とは打って変わって匂いや情景を思い起こす。戦前から戦後。高度経済成長期の空気とはこの様なものだったのかと感慨深いものがある。その写真を撮る背景となった裏話や体験談、思い出話や歴史解説をまるで詩の様に語る。写真のセンスと共に、今風で言うストーリーテリングの才能を感じずにはいられない。1度手に取って欲しい。2021/01/27

さっと

6
棄てられた朽ちていくばかりの哀愁ただよう廃墟写真の構図は極論どうしたってありきたりなものになるだろうが、この本は自身の体験にもとづく文章によってより印象深いものにしていて飽きることがない。高度経済成長の中で消えていったもの、まだまだ戦争や戦後が身近にあったこと、その時代をわたしは「歴史」としてしか見られないけれども、筆者は「記憶」の中でとらえている。わたしも廃線探訪をよくするけれど、世代によって見方がこうも違うのかと胸をつかれた。2018/10/27

おさとう

3
廃墟系写真にトキメくつもりで頁を開いたら、予想外の方向からのアプローチで衝撃を受けた。所謂「暗い昭和」を語る文章と、存在する事でその終焉を伝え続けている廃列車との組み合わせがマッチしている為に、より深い哀愁が感じられる。2009/12/01

Typhoon

2
丸田祥三は、写真家であり詩人だ。写真もいいが、そこに添えられた言葉たちもいい。さまざまな感情を蒸留した上にそれは生まれるのだろう。そこには常にノスタルヒアスの哀しみが漂っている。黄昏時に迷子になった少年時代の記憶、そんな一冊。2014/12/30

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