内容説明
飄々とした人柄と軽妙な文体で、没後もなお人気を集める作家田中小実昌(通称コミさん)の、長らく入手困難だった作品を中心に編まれたエッセイ・コレクション。第1巻は、自分自身について、作家・友人たちとの交遊、家族との生活、女性たちとの色っぽい関係などを扱った作品を収録。
目次
第1章 ぼく
第2章 おんなたち
第3章 酔払交遊録
第4章 作家たち
第5章 家族オペレッタ
第6章 戦友・旧友
著者等紹介
大庭萱朗[オオバカヤアキ]
1962年北海道生まれ。出版社勤務を経て、文芸評論家・フリー編集者として活躍中
田中小実昌[タナカコミマサ]
1925年東京生まれ。東京大学文学部哲学科中退。バーテン、香具師などを転々とする。H・チェイス、R・チャンドラー、C・ブラウンの名訳で知られる。「浪曲師朝日丸の話」「ミミのこと」で第80回直木賞、『ポロポロ』で第15回谷崎潤一郎賞を受賞。2000年2月アメリカで客死
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感想・レビュー
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踊る猫
30
呆れてしまった。拍子抜けした、と言っても良い。難しいことなどなにも書かれていない。著者は海千山千を潜り抜けて生きて来た東大哲学科のインテリだが、書かれているのは女性のことばかり。どんな女性に笑われて、どんなエッチをして来たか。あとは酒だ。でも、酒豪や性豪というわけでもなさそうだから困ったものである。コミさんはきっと、「少年」だったのだろう。性差別的な言葉は使いたくないが、フェミニンな感受性を備えていた人、とも言える。だから、タフネスもなければマッチョイズムもない。尖ってもいない。まろやかな文体がクセになる2019/11/24
勝浩1958
13
このエッセイを読み終わったその日に、このエッセイでも語られていた野坂昭如氏が亡くなられました。だんだん個性的な作家がいなくなって、淋しい気持ちでいっぱいです。コミさんは日頃は脱力感漂う酒飲みのおじさんといった感じなのですが、時々語られる哲学的な言葉にハッとすることがあります。その落差が良いのです。 野坂氏も破天荒な言動で、ときの人になられたこともありますが、その本質は優しい正義のひとであったように思います。マスコミに媚びない硬骨の文士よ、現れよ!2015/12/10
ぞしま
8
コミさんと馴れ馴れしく呼ぶのを許して頂きたいが、色褪せない。対談読むと、コミさんだけ色褪せてない。矛盾するようだが、昭和の持つsaudadeのようなものも感じた。一息したら他の作品も読もう。変わってしまったのだろうが、ゴールデン街にも近々にいきたい。2015/08/05
k.m.joe
6
新宿ゴールデン街の住人、酔客、女性陣、作家、家族、小実昌さんが関わりを描く事で、小実昌さんの人間性が浮かび上がる。本質を捉えて本音で生きた人だった。2017/12/09
yoyogi kazuo
1
「神秘と宗教とはちがう」というエッセイを読んで、この作家は信用できると思った。2022/05/08