内容説明
「英語が読めるから翻訳でもやってみようか」この考えがいかに甘いかは、やってみればすぐわかる。翻訳を仕事にするには、何が必要なのか。ベテラン翻訳家が作業の実際を具体的に語り、あと一歩のコツをていねいに指南。他人の誤訳を斬りつつ自分の失敗をさらし、台所事情まで公開する、実に役立つ納得の一冊。
目次
第1章 翻訳作業の実際(翻訳の現場報告;超訳を斬る)
第2章 翻訳家ができるまで(駆け出しの頃;二足のワラジで十六時間労働;『破壊部隊』を機に一本立ち;販売拡張、所得倍増;八〇年代後半から現在まで)
第3章 職業としての翻訳業(翻訳業への第一歩;どうすれば仕事を得られるか;翻訳でいくら稼げるか)
著者等紹介
小鷹信光[コダカノブミツ]
1936年岐阜県生まれ。早稲田大学英文学科卒業。日本推理作家協会およびアメリカ探偵作家協会会員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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hit4papa
40
作家であり翻訳家である著者が、知られざる(?)翻訳業の裏側を語るもの。英語から日本語を単に置き換えるのではなく、一語、一語、悪戦苦闘する姿が浮かび上がります。実際に文章をどのように訳すかを例示しており、如何に時間がかかり、努力の積み重ねであるのかが良く分かります。翻訳の依頼から出版まで臨場感たっぷりに日記風につづっている箇所は、甘い考えで翻訳業を目指す方を尻込みさせるに十分です。著者は、翻訳業を志す人の教育も熱心だったようで、特に下訳を、人材育成の一つの手段として考えていたというのは発見です。2024/10/29
narmo
5
昔流行ったシドニー・シェルダンの「超訳」と言う言葉はとても気になっていました。コンセプトはいいんじゃないの、と思っていたけど、この本で「超」の具体例を知ることができてよかった!コンセプトはいいけど、やはりもはや翻訳ではないと思ってしまった。超訳じゃなくて「翻案」て呼んでた方が平和だったかも。後ろの付録は、うんうんと頷きながら拝読。勉強会で話題になる点ばっかりで、どの言語でも似たような悩みを抱えてるな〜と安心しました。2021/12/13
法水
4
ハードボイルド小説の翻訳で知られた小鷹信光さんの翻訳指南書。一冊の翻訳書が刊行されるまでの流れから翻訳業でどれだけ稼げるかまで、自身の体験に基づいて具体的な数字を交えて詳らかにしている。いわゆる超訳批判もあるのだけど(船戸与一さんによるダシール・ハメット作品)、その批判に対して深町眞理子さんから届いた手紙にハッとさせられたという追記がイイ。2018/01/31
くじらい
3
これは名著。 自身の翻訳作業を実況中継したかのごとく綴られた翻訳日誌や、年収など赤裸々に語られる翻訳家の内情も面白いが、巻末にまとめられた「翻訳のコツ」が大変勉強になる。翻訳に興味が少しでもある人には薦めたい。2023/03/15
Koning
2
文芸書の翻訳という仕事をハードボイルドの第一人者といって良いだろう小鷹信光さんが書き綴った本。古代語の翻訳で田川の言っている事と現代の文芸書の翻訳の違いがよくわかる。例の新訳という超訳な文庫の編集者に読ませたい一冊(笑)現代アメリカ語のお勉強にもなるので、時々読み返すことにした。