内容説明
「三島美学」という表現がもはや常套句のように使われるが、その本質は一体どこにあるのだろうか。廃墟、聖セバスチァン、ダリ、室内装飾、俵屋宗達、タイガーバームガーデン―約20年にわたる表象をめぐる文章から、三島の隠された思想が浮かびあがる。美と芸術についての三島の思考を追体験する、最良の編者による文庫オリジナル・アンソロジー。
目次
1 美と芸術
2 時代と芸術家
3 廃墟と庭園
4 美術館を歩く―「アポロの杯」より
5 三島由紀夫の幻想美術館
6 肉体と美
7 肉体と死
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925~1970。本名、平岡公威。東京・四谷生まれ。『仮面の告白』で文壇の地位を確立。以後『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』など、次々と話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった
谷川渥[タニガワアツシ]
1948年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。美学専攻。國学院大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いろは
26
三島由紀夫の美学と言えば、『解説』にあるように、自刃による死に方がまさにナルシシズムであり、これも美学と思えるのは、私だけではないはず。この作品では「三島美学」について、言うところの三島のものの見方、考え方をつらつら論じている訳ではなく、芸術による美学が大半なので、普段から美術館や博物館に慣れ親しんでいる人には、大変読める作品と言える。谷崎潤一郎の『金色の死』ついても最後の方で少し出てきたので、私のようなファンにとっては読みたくなる作品となった。他の文豪達も最期は自害だったりするが、それも美学なのだろう。2018/11/02
おがわ
2
グイド・レーニの《聖セバスチャンの殉教》。ワットーをめぐる評論が興味深かった。橋本治だったか、三島の好きな作家がワットーなのに意外な心持ちがした、と書いていたのが印象に残っていたので。永続的な「今」を揺曳し、その先の勝利も又絶望も知らないワットーの絵の中の男女は、結末を永遠に留保されているという意味で究極に「反小説的な」存在だとも言えよう。そう考えれば普段執筆に追われていた三島がワットーの絵に安らぎを感じていたのも何となくわかる気がする。2022/06/03
スリルショー
2
初っ端からヘレニズムなどの言葉が並び、勉強した事のない者には難しい。ここに書かれたことを研究している学者の方々も沢山いるだろうが、この作家が書く文章は美文であり、少し皮肉に響く箇所もあるが、それも含めてこの作家の天才を感じる。他の文庫におさめられたエッセイもあり、再読になったが、楽しい読書体験だった。2021/08/11
唐辛子仮面
1
三島美学と称される感覚。美についてのエッセイを集めその輪郭がみえるような気がする。タイガーバームガーデンへの表現がすごい。「幻想が素朴なリアリズムの足枷をはめられたままで思うままにのさばると、かくも美に背致したものが生まれるという好例である。」2016/05/03
蔓下 寝夫
1
『大体、二流のほうが官能的魅力にすぐれている』一流を知り尽くしている人間だからこその言葉だと感じた。
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