内容説明
遍歴の騎士が風車を怪物と見誤り、従士サンチョ・パンサが必死にとめるのもきかず、槍をかまえて突進していく―不滅の名作『ドン・キホーテ』は発表当初から大評判となり、気をよくしたセルバンテスは後編を出版すべく執筆に励んでいた。ところがそこに、非常に手の込んだつくりの贋作が現れた!本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
還暦院erk
7
図書館本。この贋作の存在は『よちよち文藝部 世界文学篇』(久世番子)p65~で知って、本家作品と同時進行的に読もうと決めていたw。さて、本書は本家作品そっくりの文体で序言が始まるのだが、すぐさまセルバンテスに喧嘩売りまくりで血の気が多いったらありゃしない。本篇の方はパクリ版だけに原作の劣化コピー的な残念さを感じざるをえないけれど、ギャグセンスは時々本家を凌駕してる。小説内小説『失意の富者』は展開がトンデモ過ぎて超悲惨。『幸せな恋人達』は無理矢理な奇跡がハッピーエンドを生んで逆に独創的。一読の価値あり?2023/06/07
maqiso
2
ドン・キホーテとサンチョがおかしなことをして周りの人が笑うという構図がはっきりしていて、「ドン・キホーテらしさ」はあって面白いが真作とはだいぶ毛色が違う。作中作はここだけ信賞必罰が強くてイマイチ。2021/08/30
おとや
2
アベリャネーダの手になる「ドン・キホーテ」の続編。セルバンテスの書いた所謂「後編」の中では当然ながらけちょんけちょんに言われている本作ではあるのだが、読んでみると意外にもそれなりに物語の程を成しており、なかなか面白い。ただし、キホーテについては「前編」に話を掛けて狂気の人物に描かれており、セルバンテスの手による「狂気なのか正気なのか判別しがたい」絶妙なバランスを明らかに逸脱している。サンチョも非常に愚鈍ではあるが、前編の彼はこの程度だった気もし、むしろ本作の影響で後編のサンチョは割と聡明になったのかも。2013/04/17