内容説明
「長崎26殉教者記念像」「病醜のダミアン」「聖クララ」などの端正で崇高なまでに美しい石像彫刻とデッサンで知られる彫刻家の初めての滋味あふれるエッセイ集。彫琢された詩的な筆致で、芸術と人生をめぐる思索を描いた本書により、日本エッセイストクラブ賞を受賞。彫刻・デッサンを10点収録。また、外国絵画・彫刻などの鑑賞も収める。
目次
巨岩と花びら(巨岩と花びら;一枚の葉;渓流にて ほか)
めぐりあい(選んだ道;中原悌二郎;堀江尚志 ほか)
彫刻の顔(長崎の丘;郷愁;さいかち ほか)
石工の心(小さな石像;中世の石工たち;石工の心 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおた
19
中学か高校の教科書で読んで感銘を受けたものの、「収録された本を買う」という行動に結びつかないまま幾星霜。もう古本屋でもなかなか見なくなった。自分でもよく行く奥多摩の川で釣りをしている描写にシンクロニシティを感じ、何よりも著者の彫る顔つきが人間らしさにあふれていて、画集とともに手元に置いていつまでも慈しみたい一冊。作品は岩手県立美術館に所蔵されているので、このじんわりした感動が続いている間に行ってみたい。2020/03/04
オタダオ
2
東近美にある舟越保武の彫刻の顔がなんとも優しげで、こういう顔を彫りだせる人に興味をもって読んだ本。ほぼイメージどおりの真面目でちょっと朴訥な感じのする人柄がにじみ出ている文章だ。生きてきた中での後悔や痛み(父親や松本俊介とのこと)を正面から受け止め、それとともに生きてすばらしい作品に昇華させているのだろうなと思った。だからこそあの静謐で内省的な表情をもった作品を制作することができたのだろう。2012/10/13
サカナ
1
車谷先生の忌中の中に、このエッセイにある「病醜のダミアン」が出てきたため、気になって読んでみた。舟越さんの存在を認知したのは初めてだった。(長崎の彫刻は実際に見たことがある) なんというか、彫刻も素晴らしいことは言うまでもないのだけど、こんなに芸術家とは感性が研ぎ澄まされているのかと感嘆せざるをえなかった。 手元に起きたいけど絶版なんだろうな。2020/08/29
afro
0
拾い読み。文章が上手い。車谷長吉から『病醜のダミアン』へ流れる。2011/07/16