内容説明
画家として知られる著者は、また名文家としても名高い。「一番したい事をする、やらねばならぬ事をする、時をはずさずに」。何げない調子で書かれてありながら、一度読めば忘れられない印象を与える名言の数々。長年の随筆文から珠玉を集めた自選文集。「我はでくなり何も出来ず つかわれて踊るなり」。ユーモラスに明快に…。心に染みる随筆52篇。
目次
流行
物見遊山
関西の景色
正月嫌い記
金と時
男子の魂魄
名前
歳未閑人の話
魚
明窓浄机〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さゆう
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「常識に感銘はない。みなが常識の程度に暮らしていたら、こんな退屈な世界はないp176 」ありふれた日常からはじまる文章は淡白でありながら、キッパリと言い切る歯切れよさに気持ちよさを感じました。太平洋戦争下、芸術は隅に追いやられて、悶々とした時間を過ごした著者。ラジオで敗戦を知り呆然とする家族の前で、思わず「負けたのではない」と怒鳴ります。「撃たれたものは全て負けた。身体でも。心でも。私はどこに傷をうけたか。私はどこにも傷をうけていないではないか。そこで私は云った。これからが俺達の時代だ。p170」2022/07/03
ラム
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著者は長命で戦前から膨大な数の随筆を綴ってきたが、本書は晩年に纏めた「文集」から選定 力強く重厚なタッチの作品そのままに自己の芸術観、絵画論をはじめ歯に衣着せぬ発言は読む者をハラハラさせる 純粋美術の追求や水墨画、書、篆刻、陶芸等多岐に渡る 独学を貫き同じ境遇のセザンヌ、ゴッホに惹かれる「教わるということは人から餌を与えられることである」 画家だけでなく、斎藤茂吉、志賀直哉等交友関係は幅広い 四つの章から成るが「身辺記」と「ひと」の章が読ませる 中でも「武蔵野日記」が生い立ち、人々の生活等描いて滋味溢れる2020/09/19