内容説明
「口先で奇麗事を言う今の世の中、どうせ二枚目は無理だとなれば、思い切って悪党になりこの世のあだな楽しみの一切を憎んでやる」。世界を憎悪するリチャードは実の兄を陥れ、殺した敵の妻を口説き、幼な子を惨殺し、利用しつくした臣下はごみのように捨て―。奸計をつくして登りつめた王座に、破滅はあっけなく訪れる。爽快なまでの「悪」を描いた傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
144
王家の歴史において稀代の悪役。見た目にわかる障害を持って生まれた者は、嫉妬深い用心すべき人物だと描かれることは多いのではないかと『ストーナー』でもあった偏見を想う。行き詰まった頃に現れる王家の血を引くたくさんの亡霊たちが、呪いと「死ね」という言葉を次々にリチャード三世に投げつける。最期に赤と白の薔薇の呪いをとく祈りは、本来はヨーク家が世継ぎだという長年の強い怒りがもたらした血塗られた歴史の幕引きに相応しい。この劇はエリザベス一世の時に上映されたのだから、大団円だ。海を渡るリッチモンド、のちのヘンリー7世。2022/01/08
KAZOO
92
シェイクスピアの作品には結構昔の王様の名前を関したものが多いのですが、イギリスの王朝の歴史が細かいところまでわからないのでいつも読まないでいることが多かったのです。松岡さんの訳で初めてリチャード三世を読んだのですが、これくらいの悪になるとかえって小気味よさが伝わってきます。最初の独白のセリフがいいですね。これでもう引き込まれてしまいます。誰がやればいいのかなどを考えていると楽しくなります。年寄りではジャック・ニコルソン、中年ではホアキン・フェニックスあたりですかね。2015/08/09
Gotoran
65
せむしで、チビという醜悪な容姿でありながら、鬱屈とした野心で、敵、兄、家臣、妻を次々に殺害し、苛烈な攻撃性と狡猾さに加えて、言葉巧みに、王位を簒奪していくグロスター公リチャード(『リチャード三世』)の栄光と破滅が描かれる。手段を選ばず権謀術数に長け、悪の権化と化したリチャードのエゴに加え、登場人物が憎しみ合いドロドロとした人間模様の中に、自己中心的なエゴイズムが垣間見られた。2017/07/25
yumiha
50
シェイクスピアによって極悪人にされたリチャード三世、という評をどこかで読んだ記憶があったのでチョイス。なるほど、初っ端から自ら悪党宣言をなさっておられる。そして、権謀術数をめぐらして善人のふりをして、次々と親族その他を死に追いやる。圧巻は、第三幕第7場のバッキンガム公との猿芝居。でもそれが周囲の人には見え見えだったことが情けない…。そんなリチャード三世を解説の中野春夫も、シェイクスピアによって貼られた「悪のレッテル」と分析されている。きっと私の読んだ評の元ネタは、この解説だったんだろう。2022/10/11
たまきら
41
松岡和子訳版、リチャード三世はなんと初読。ただ、マンガや映画、芝居にふれたことがあるため筋や名言は多少把握していました。格調高いというよりはきちんと理解するための訳で、すごく最初の一冊目にはふさわしい一冊でしたが、もっと視覚化されているほうが自分は把握できるので、ちょっとまた違う形で咀嚼したいです。…ていうか、この男すごく魅力的じゃない?2024/12/16