内容説明
妻をなくした中年男の一日を、一抹の悲哀を込め、ややユーモラスに描いた本邦初訳の「楽園への小道」をはじめ12編を収める。各ジャンルの中から作家の資質がもっともよく現れている作品を選んだ、1冊でカポーティの魅力を満喫できる本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
53
『窓辺の灯り』のサキ作品のように穏やかな語りの中でラスト一ページで不穏に叩き込まれる『窓辺の灯り』は乙一さんの『GOTH』や『海辺のカフカ』のジョニーウォーカーを連想しました。傑作はやっぱり、『無頭の鷹』です。個人的には鴉と暮らすようになってからの悲喜こもごもを描いた『ローラ』、オチが見事な『ヨーロッパへ』、少年の秘めていた願望とその秘密を明かした人物への敬愛と侮蔑と恐れを描いた『くららキララ』が好きです。2013/11/25
二戸・カルピンチョ
28
娯楽小説のような、親切なエンターテイメント性はなく、しかし作り込まれた中性的な美しい文章と描写に、今回も撃ち抜かれた。カポーティの作品に触れると、毎度頭のなかに情景が溢れ返る。そのこぼれ落ちるモノを感じる度に、映像化をひとり熱望するのだが、「クリスマスの思い出」「ミリアム」「楽園への小道」が短編三部作として映画化された過去を知る。訳者のカポーティへの愛も感じながら、必ず用意された悲哀に酔いしれる。2016/11/27
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
22
どこか物悲しくも皮肉のきいた短編集。『ローラ』『ジョーンズ氏』『もてなし』『窓辺の灯』が好き。2014/11/09
羽
20
一つひとつの言葉のもつ意味が、そっと開花していった 。たとえば、音や香り。タンバリンを打つような風。落ち葉の中に落ちたぶどうの香りで、あたりの空気までが甘い。美しい春の予感。たそがれ、そして夜、静寂という名の音の繊維がきらめく青い仮面を織る。...風変わりな登場人物たちからは目が離せず、うつくしい自然の描写には心癒され、カポーティの描く世界にのめり込んでいった。脆さと美しさを湛えた危険な短編集。2021/08/21
naotan
16
初めてカポーティを読む。たった数ページの作品も読み応え十分で楽しくなりました。太宰治に似ているなあと思ったのは私だけかしら。2020/03/24