内容説明
一夜、江戸吉原に遊んだ机竜之助は喀血、半死半生の身を奇しくも米友に助けられた。竜之助は米友の長屋に身を寄せ病を癒すが、やがて人の生き血を求め市中を徘徊するようになる。その龍之助探索のため吉原通いを続ける宇津木兵馬は、いつか遊女に溺れる。お喋り坊主弁信、安房清澄山の奇童茂太郎など特異な人物も加わって、物語はなお玄妙の趣を深めて進む…「安房の国の巻」「小名路の巻」「禹門三級の巻」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
19
中だるみはあったけど、これまでで一番面白い巻だった!介山はこれを書いて4年ほど休載。恐らくここで終わらせるつもりだったのだろう。その証拠に竜之助が人を斬る理由がハッキリと語られる。また、弁信が辻斬りに遭遇する場面や、竜之助が米友に「お前を斬りたい」と告げる場面は鳥肌もの。さらに善人の兵馬が遊廓に溺れて竜之助と変わらなくなってゆく展開も良い。そして何より衝撃のラスト…。 最後の一文は特に素晴らしい。大菩薩峠はこれを描きたかったのか!と感慨深くなる。しかし全体から見れば、まだ物語の3分の1にも達していない…。2020/10/07
ソングライン
12
理想のない人には人生が色と欲とよりほかにはない。机竜之助を仇として武道に励んできた宇津木兵馬は竜之助の探索のために吉原を訪れるが遊女に溺れ罪のない人を斬ってしまう非道を行ってしまいます。一方竜之助は喀血し病弱の身となるも罪なき人を斬ることを止めません。江戸にもどった神尾主膳、悪行は止まらず遂には酒に酔い自分の屋敷を焼き払ってしまいます。理想なき男たちの放浪は続きます。2023/08/27
読書実践家
5
駕籠、提灯、三味線、琵琶生活様式が全て違う、当たり前だけど。そして、薩摩藩の登場。時代は幕末の沸騰点へ。2015/12/06
Terry Knoll
4
机龍之介がなぜ人を斬るのか理由は謎のまま。良き考えたらサイコパスの小説でした。脇役立ちも魅力たっぷりです。2016/12/29
Auristela
1
この巻から俄かに不動明王やニ童子などの象徴性やら幻想性が展開される。お喋り盲法師の狂言回しも面白い。そういえば、竜之介の我が子を想う夢のくだりが中川信夫の地獄を想起させた。2014/01/20