内容説明
夏の夜、静かな川べりに突然骨の砕けるすさまじい音がひびく。殺意に憑かれた教師ブラドリーが、ついに恋敵ユージンを襲ったのだ。傷を負って愛を得る者、自らの罠に落ちて死に至る者、家庭の幸福を見出す者、そしてゴミ箱に放りこまれる者―。いくつもの運命の川が物語の大河に流れこみ、大きくうねりつつ結末へ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
99
下巻は本人が選べない出自やハンデとの和解劇。階級、家族、性別、人種、身体・知的障がいから意識偏向にまで及ぶキャパは著者のジャーナリズムの賜物。平等の不可能性を汲んだ彼は拝金主義で麻痺し、硬化し、湾曲した生活観を描き、人間の愛・信頼・救いをどこに繋ぎ止めるかを追求した。格差や偏見へ立ち向かう意志と行動力、及び自立のためのリセット試練の激烈さは現代意識の深刻さの現れだ。"living-deadness"脱却のポイントは偏屈を排し誰もが型に捉われず友を持ち共通化させる機会のあり方。SNSにも通じるモダンな観点。2018/06/19
NAO
66
ボッフィン氏が誠実だったからこそ、金を手にしてから彼の変化はベラを驚かせ、改心させた。もちろん、貧しいままでも心清らかなリジーの存在も大きかった。でも、ベラのためだとは言え、こうやって芝居をうつことには、引っかかるものがないでもない。ディケンズには身分違いの男性と貧しい美女との恋愛話が多く、ひたすら相手を思い続けるけなげな女性はディケンズの理想の女性像なのだろうと思われる。これがトマス・ハーディなら身分の低い美女は金持ちの男に遊ばれ捨てられ身を持ち崩して終わりだが、ディケンズにそういう話はあまりない。2018/02/14
フリウリ
9
小説史上まれにみる大どんでん返し。ロークスミスがハーマンその人であることは、とっくに明らかにされていましたが、まさかあの人やあの人やあの人が「ぐる」であったとは! なお、父を子と見立てたり、自分を赤ちゃんと見立てるような女性陣の言葉遣いや描写が、少し謎めいていて、おもしろく感じました。あくまで悪人を貫き通すウェッグ、ライダーフッド、ブラドリー、ラムル夫妻などの登場人物も忘れがたいです。すばらしい。1865年刊。102024/08/15
まふ
6
いろいろな人物が次々に現れて誰が誰だかわからないままに読み進み、中巻からだんだんと主要人物が分り、最後はハピーエンドで終わるいつものディケンズらしいストーリーであった。ごみ収集業で巨万の富を得た男の息子で殺されたと思われたまま身分を隠すハーマン氏を中心に悪徳文学者のウェッグ、純粋な貧しい娘リジー、恋慕する変質者ヘッドストーン、美しいヴェラ、急に財産を得たボッフィン氏、いかさま師夫婦のラムル夫妻、悪党高利貸の○○、善良なユダヤ人高利貸し○○、身体障害者のジェニーなど、ごちゃ混ぜのストーリーが面白い。2019/11/04
viola
4
ようやく読了♪ あらすじを知っていて・・・・というか、暗記して読んでしまったものなので、面白さは半減してしまいました。読んだ感想としては、特に風刺が凄いなー、くらい。頑張って読んだはいいけど、ちょっと合わなかったかな。2010/11/26
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- 和書
- パンの鳴る海、緋の舞う空