内容説明
「あたしの人生の目的は、お金です。愛のある結婚なんてたわごとよ」美しい娘ベラは、真摯な愛を告白した秘書ロークスミスを相手にもしない。だが、成金になったボッフィン氏の顔が日に日にあさましく変貌するさまに、心はかすかに揺れる。そんな彼女に、詐欺師夫婦が目をつけた―。恋が、奸計が、激しく渦を巻いて、物語は佳境に入る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
60
あまりにも貧しいから絶対に大金持ちの男と結婚しようと決意したベラと、あまりにも貧しいから心から愛している人を諦めようと決意したリジー。同じように最下層の暮らしをしている美女二人、考え方はまるで違う。でも、どちらの考え方も、分からないでもない。一方で、貧しくても心優しく誠実に暮らしていたボッフィン氏が、大金を譲り受けまさかの強欲爺に変身?2018/02/10
フリウリ
8
あれほど善良だった人も、金をもてば、それを失うことを恐れて守銭奴と化す。人間は何をもってその善良さを失っていくのかを、ディケンズは容赦なく書いています。悪がはびこる、善人が悪人によって凌駕される、そしてさらに悪がはびこる。このような現実世界的実像への批判精神なしに、小説という文学形式(そしてあらゆる文学形式)は成り立たないのではないか、と思わせられます。悪を描くためには善を描く必要があり、その逆もまた真。それらを差配するのはただ著者その人のみ。息をつく間もないおもしろさです。92024/08/15
viola
2
え、そうだったの!?あの人って、そうだったの!?中巻200ページ?くらいであるヒミツが明らかになります。それですこーし読みやすくなったけれど、同時進行で読んでる『ディヴィッド・コパーフィールド』のほうが面白いなぁ・・・・・・。2010/11/16
takeakisky
0
第三部第三章、幽冥の境の全てを物語る手並みの素晴らしさ。次第次第に交わるストーリーたち。生き生きと動き回る登場人物たち。すべての人を掬ってみせるディケンズ。目移りがしてしまって仕方ない。感情は上に下に、あっちへこっちへと揺すぶられどおし。お涙、いくらでも謹呈だ。大して売れないんだろうけれど、筑摩書店はもう一刷りできないもんだろうかねえ?と、ボッフィン爺さんの正気を疑いつつ最終分冊へ。頁を繰る手が止まらない。2024/12/25