内容説明
天衣無縫な文章で死後いっそう読者を鼓舞する俳優が、ジャズとミステリと映画に溺れる日々を活写する。撮影の合い間にダシール・ハメット、チャールズ・ミンガスの演奏に「サンキュー」と叫び、『ロッキー・ホラー・ショー』を見て、日本じゃできねえ映画だとうなる。役者としては宮下順子の上で腹上死し、『愛のコリーダ』で乞食役。70年代が猥雑さと活力に満ちてよみがえる。
目次
JAMJAM日記 1975・11月~12月(ニッポン社会から脱獄したい;人生はやりきれないほど面白い)
JAMJAM日記 1976・1月~12月(オレもまた「火宅の人」なのだ;女のいる場所はどこでもみんなおそろしい ほか)
JAMJAM日記 1977・1月~3月(六区は人がワンサカいて昔の日のようだった;一所ケン命芝居のケイコをやりました;万年床でJAZZを聴きMYSTERYを読み…)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Saku
8
殿山さんの交遊関係、読書遍歴、ジャズの話、たまに政治思想が軽妙に語られる。本業は役者さんなので、映画関係の人々が多く登場するが意外な一面が見られて面白い。2017/03/20
メルコ
3
自称三文役者・殿山泰司が70年代半ばに綴ったジャズとミステリーそしてコーヒーの日々。即興でスキャットするような殿山節の文章にハマリ、ズルズル読んでいった。登場する映画人やミュージシャン、ミステリーに思いをはせる。2013/09/07
やいとや
2
一読後、「成る程、被れる人も多い訳だ」と納得。七十年代日記(エッセイ?)文体の雛型の一つだろうね。折々語られるフリージャズやハメットなんかのハードボイルドミステリの話しも当然面白いが、著者の本業たる役者業の徒然がうっとりするほど豪華。殆ど固有名詞が羅列されるだけ(それだけ彼らとの仕事は 「当たり前」だったのだろうし、当に日記と云える)なのだが、 沖雅也、神田隆、芥川隆行、高峯秀子、etc.etc.…これらの必殺シリーズと関わりのある人たちの名前が出てくる度に、にんまりしてしまう。 2018/04/30
take5
2
私としては、テレビドラマやヤクザ映画、あるいは黒澤、鈴木清順、大島渚、岡本喜八などの映画の名脇役(なんと小津映画にも出てる!んですよね (「お早よう」の押売り役 (まさにピッタリ!))としてしか知らなかったけれど、この本で、熱烈なジャズ(特にフリー)ファンであることを知り、私もファンなので狂喜しました。また私は日本映画マニアでもあり撮影時の裏話や監督さんや役者さんの話なども読めてさらに嬉しかったです。交遊のあった田中小実昌の文章にも通じる、元祖「一人ツッコミ」のビート感ある気取りなき正直な日記エッセイ。1996/03/20
麩之介
2
なんとなく、生まれた時から顔を知っているような気がする俳優、殿山泰司の映画、ジャズ、読書三昧の日々。こんなスゴイ文章を書く人だったのだと、いまさらながら知った。このライブ感覚はただごとではない。リズム感がすぐれているのだな。読書に関してはほとんどミステリだけど、ときにフィリップ・ロスやカースン・マッカラーズ(『黄金の眼に映るもの』。これが文庫で出ていたとは!)を「ヒイヒイ」面白がり、金井美恵子に薦められて吉岡実を読んだり、ジャンルを問わず面白いものは面白いといってくれるのがいい。社会に対する批評眼も鋭い。2013/01/09
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- 和書
- 女精神科医 講談社文庫