感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とんかつラバー
10
こうだったらいいな…という人間の空想や夢オチが多い。テレビくんは最初のヒット作だが、かつて同世代の子供が女郎屋に売り飛ばされたり、船の飯炊きに奉公に出されて沈没して亡くなった体験をした水木サンが、せめて漫画の中では子供は幸せになってほしいという思いが込められている気がする。「河童」は河童の三平のモデルでもあるが最後はちょっと切ない。同じ河童が出てくる話でも「河童膏」は逆羅生門のような話で人間の欲深さをえぐり出している。「原始さん」は兵役中の南方での体験が反映されている。文明は必ずしも人類を幸せにしない2023/12/20
おーすが
10
「ほしがらされるだけでガマンするのが文明なんだよ」人ならぬ者との共生がテーマの巻。人から妖精や妖怪が生まれてくる話がいくつか。「体温が生育に適していたんだね」という世界のおおらかさ。河童殺しから文明への違和感に行き着くのは必然か。「宇宙虫」がとてもSF。2020/08/13
尾白
5
幻想の世界と銘打たれいるだけあり、水木ワールド炸裂。現実の心もとなさが、なんとも。2022/11/22
袖崎いたる
3
悪因悪果や文明批判、日常の(幻想の)真相モノが主だった作品であった。個人的に哲学者猿取(サルトル)には笑わせてもらった。作者が寝れるときに寝ておいた方がいいとかいう考えの持ち主であるから、時計に急き立てられて金を稼げと駆り立てられる社会に対して、「そんな生き方で本当に幸せになれますか?」みたいな立場から始終懐疑を呈しているのが作品を読んでいて感じた。「なんという空しい仕事でしょう」「空しい?仕事はすべて空しいもんだ いや人生だってそうだ」以上の言葉を自然にキャラに語らせる人間を、ぼくは拝んでいたい。2015/05/22
えふのらん
1
いま、ここにいながら角度を変えながら世界を観る。虚構にだけ許された楽しさが詰まっている。テレビ、丸い輪、仮面、小人、透明人間、いずれも俗な小道具なのにどうしてこうも楽しいのか。オブライエンやコリアーの影響を受けた作品も散見されるが、それも気にならない。特にあれは何だったか?から小道具を引きつつも”○×との共同生活”に落とした影女が面白い。いつも不憫な役回りをする山田も幸せそうだ。2024/01/23