内容説明
日本全国を歩きめぐり、実際に自分の目で見て、そこに暮らす人々に話を聞いて調査した民俗学者、宮本常一。彼が日本の村と海、それぞれに暮らす名もなき人々の、生活の知恵と暮らしの工夫をまとめた、貴重な記録。フィールドワークの原点がここにある。
目次
日本の村(二つの家;屋根の形;草ぶきから瓦ぶきへ;たたみ;間どり ほか)
海をひらいた人びと(船の家;クジラとり;一本づり;カツオつりとノベナワ;網ひき)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うりぼう
40
ブックオフで購入。普通の人々が、一所懸命に生きた証を村と海をテーマに子供たちに語る。とにかく足で歩く、いくつもの風景を見ることで、その奥にある人間の豊かさ、真摯さ、そして、共通する歴史が見えてくる。村の協働性を守ろうとする静の感覚と海を拓くダイナミックは動の感覚の対比が面白い。村編は、各家の間取りや座席順、イロリの自在カギ、カワナの分布に特色があり、墓から村の多様な成り立ちを読み解く。海編のクジラ獲りは、飯島和一の歴史物を読んでいるような躍動感があり、様々な工夫と足運びでの情報収集が港や漁を豊かにしてきた2012/12/06
雲をみるひと
30
宮本常一の一昔前の日本の風習、風俗論。本作では村と海関連に特化している。テーマ毎の説明が主の前半は作者らしいタッチだが、後半は歴史も交えたストーリー仕立ての構成で読みやすい。全編に渡ってなるほどそうだったのかと思える箇所が多い。博識な作者から日本についての気づきを得られる貴重な一冊だと思う。2023/07/17
tsu55
25
「旅はうかうかしてはいけない」著者は、東京に出てくるときに父親からそう言われたそうだ。汽車の窓から見える農家をスケッチしたり、道の両側の田畑のかたち、道端の道祖神などをよく観察することによって、その土地の人々や、その祖先の暮らしを思い、心を寄せることができる……。なんと豊かで充実した旅だろうか。 子供向けに書かれたものだそうだが、私たちの先祖がより良い生活を営むために、工夫を凝らしてきた生活の知恵をいかにして得てきたかが、平易な言葉で書かれていて理解しやすい。2023/09/28
Tomoichi
25
初めての宮本常一。文章がなんとも言えない。著者の人柄が出ているというか、また対象に対する眼差しがいい。「日本の村」に出てくる農具や民家は失われて久しいので今となっては貴重な記録である。「海をひらいた人々」を読むと想像以上に昔の人が船に乗って遠くまで移動していたことがわかる。教科書ではわからない日本の歴史がここにはありました。2019/03/10
Arisaku_0225
20
民俗学者として多くの引用がされる宮本常一の二作品と解説を収録。宮本の全国津々浦々旅して得た知識を元に日本の常民の暮らしを語りかけている。学者だと言うのに、どこかあたたかみがあり、まるで祖父母から昔話を聞かされているような気分になる。その話の一つ一つの解像度が濃いのだからすごい。「知は、現場にある。」を体現する、民俗学とはかくたるべしとするような本だった。宮本が記録した日本から数十年が経ち、地域差や人々の苦労が感じられなくなってきた昨今、目を凝らしてみればまだそれらが「発見」できるのだろうか?2023/05/29