内容説明
中国旅行記ではあるが単なる旅行記ではない。そこに住む人間と彼らの生活に鋭い視線が向けられ、心の底にひそむ複雑な心理を探った短篇58篇を収める。皮肉屋モームの目に、万里の長城は、大河は、中国人の生活は、そこに暮らすヨーロッパ人はどう写ったか。新訳で紹介。
目次
開幕
奥方の客間
蒙古人の隊長
転石
大臣
晩餐会
天の祭壇
神の下僕
宿屋
光華穴
恐怖
絵
国王陛下の外交官
アヘン窟〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あくび虫
3
小説の軽快な面白さに比べて、なんとなく入ってこないというか、今一つ面白みを感じ取れない一冊。翻訳ものの性として、原作と翻訳、どちらの問題なのかは分かりませんが。――とにかく、モームの皮肉な人間批判自体は面白い。2018/10/15
渡邊利道
3
別名『チャイニーズ・スクリーン』。モームの中国旅行の印象に基づく、掌編の趣のある作品もあることはあるが、おおむね小説というよりは断片、デッサンに近いエピソード集。風景の心象的描写や、人物への皮肉なまなざし、風物へのエキゾチックで感傷的で、どこか突き放した虚無感を感じさせる文体になんともいえない味わいがある。2017/07/02
nightowl
3
社交界や南国を旅行した際の経験を元に作られた(らしき)ショートショート集「コスモポリタンズ」に比べると中国をテーマにした雑文集という印象。エッセイなのかフィクションなのかどっちつかずでもやもやした気持ちになる。ディケンズの名訳で知られる訳者がもったいない。折角の新訳なら同じちくま文庫で刊行されている「カジュアリーナ・トリー」か「アー・キン」がよかったのに…2016/04/26
山田
2
これは良い翻訳者。原著の魅力を引き立て、かつ自分を出し過ぎない程度に抑えられた文章が読みやすく、短篇集という型式にふさわしい密度で書かれている。旅行記というより短篇という文句は、まさしくその通りの内容で、著者の個性がよく発揮されていると思う。どれを白眉とするかは悩むところだが、自分は『町の名所』を推したい。2013/03/20
畳屋民也
1
「五彩のヴェール」つながりで読んだ。 モームが1920年に中国に旅行した際のメモをもとに書かれた短編集。 一歩引いた視点で書かれた皮肉が利いて辛辣な文章からは、どことなく徒然草を思い起こされた。2022/03/21