内容説明
門弟として師の夏目漱石を敬愛してやまない著者が、時にのぞみ、おりにふれてつづった師の行動と面影とエピソードの数々。さらには、同門であり、よき理解者であった芥川龍之介との交遊を描いた百鬼園文章のすべてを収める。
目次
紹介状
漱石山房の元旦
漱石先生の来訪
漱石先生の書き潰し原稿
明石の漱石先生
漱石先生の思ひ出拾遺
貧凍の記
漱石山房の夜の文鳥
前掛けと漱石先生
「つはぶきの花」より
九日会
漱石俳句鑑賞
「百鬼園日記帖」より
竹杖記
河童忌
芥川教官の思ひ出
亀鳴くや〔ほか〕
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TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
106
崇拝する漱石先生と友人である龍之介を語った内田百閒さんの文章を集めたエッセイ集。漱石先生に対する百閒さんの姿勢は、正に、尊崇・畏敬・敬慕などの絶対的なもの。木曜会に集う弟子たちに、これほどまでに慕われた漱石先生の威厳を実感する。漱石との出会い、漱石への借金の無心、臨終の日の出来事など、同じ話が何度も出てくるが、百閒さんは、何度も何度も繰り返し語るうちに、古典落語のように話が洗練されていったのだろう。漱石・百閒・龍之介のいずれとも親しかった野上彌生子さんの日記が巻末に収録されているが、辛辣な言葉が面白い。2024/03/17
ケイ
85
内田百間と言えば、芥川の河童忌によせて書いたあの有名な文章しか知らなかった。先日、文藝春秋の「昭和の百人」にて日銀総裁と同席している借金王のように紹介されていたのとその外見から想像していた豪傑そうなイメージとは随分と違う。お坊ちゃん育ちで、文章に品がある。特に面白そうな事も書いていないのに、ふと目にとめてしまう文章を書く。芥川の思い出はひたすら哀惜の念に耐えない様子が伺えるが、漱石に対しては、一歩距離がありながらも借金の催促をしたり、書いてもらったものを売ったりと、甘えたで情けない人だが、正直なのだなあ。2014/09/27
がらくたどん
62
さて、内田百閒④三上さんの『百鬼園事件帖』を読んだら懐かしくなって。百閒が師と仰ぎ見送った夏目漱石、「友情と云ふよりも、友の恩として記憶する」と偲んだ芥川龍之介。文学史に残る二人の文豪との思い出を綴った文章を掲載雑誌・集録図書から丹念に集めた「編集の妙」が光る一冊。「事件帖」に寄せて抜き出せば漱石の背広の話は「漱石遺毛」に、芥川が突いて旅立つ竹杖の話は「竹杖記」に。「遺毛」は万年筆に背広に時計・・。恩師漱石からの頂き物リスト(ほぼ使い倒している)で軽快に始まり、究極の遺品として「鼻毛」に至る追悼文。→2023/10/12
saga
48
編纂者は平山三郎(ヒマラヤ山系)氏。百閒の随筆等の中から夏目漱石と芥川龍之介に触れた文章を集めたものだが、やはり漱石の分量が多い。芥川の先輩であり親友だったと思わる百閒。しかし、21世紀の諸氏は百閒をご存知であろうか? かく言う自分も鉄道という繋がりがなければ百閒を知らなかったであろう。稀代の借金王であった百閒。造り酒屋の坊ちゃんで、乳母日傘で育った彼だが、帝国大学に入学するほどの知能と文学の才能を持ったことから、漱石と龍之介との交流が生まれたことが羨ましくある。2025/01/17
あーびん
34
内田百閒が師の夏目漱石と親友の芥川龍之介についてつづった随筆をセレクト。その為、漱石に借金をする為に湯河原に行くことになる話やそれぞれの死についてなど重複するエピソードも多い。百閒の漱石に対する崇拝ぶりは凄まじく、「漱石遺毛」では漱石は原稿に行き詰まると鼻毛を抜いて原稿用紙に貼り付ける癖があったのだが、ある時もらった書き損じの草稿に師の鼻毛がついているのを見つけて嬉々として、そして漱石の死から20年後にしみじみと感じ入るのである。先生を好きすぎてこれはヤバいやつ...2021/01/12