出版社内容情報
深い詩魂と強靭な理知と。未完のまま遺された第三作品集に収録されるべき作品「弟子」「李陵」「名人伝」等を中心に編成。
【解説: 日野啓三 】
詩魂の稀なる顕現…。「弟子」「李陵」「名人伝」「章魚木の下で」他遺稿・断片等を収録。
目次
弟子/李陵/名人伝/章魚木の下で/遺稿/雑纂/断片
内容説明
詩魂の稀なる顕現…。「弟子」「李陵」「名人伝」「章魚木の下で」他遺稿・断片等を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
69
中島敦というと、古代中国を下敷きにした作品が多いと思っていましたが、そうでもなかったようです。私生活をベースにしたような作品も買いていたのですね。未発表の作品を含め、その振れ幅の大きさに驚かされます。2020/04/13
優希
41
中島敦は不思議な作家です。中国古典をベースにした作品はやはり名作ですし、未完の作品はファン向けですし、作品の振れ幅が大きいのですよね。作品数は少ないものの、様々な文学を残したことは確かでしょう。2022/10/01
姉勤
24
”天は何を見ているのだ” 『弟子』。”天は矢張り見ている”『李陵』。個人ではどうにもならない運命や宿命。そして、自由自在を得ながら、その自由自在すら忘れた『名人伝』。自身の早世を予感し、その通り早逝した著者の深い内証は、私小説的な短編や、断片にも顕れる。短い生の中で、朝鮮やロシア、南洋など異質なものに触れ、また家族、疑似家族との関係のなかから、許容と拒絶へ至る、折衝と葛藤。人間は苦しいが美しくもあるとわかる、作品群。2020/04/07
SIGERU
23
全集の3巻を読了。順序でいえば2巻なのだが、書簡・日記は最後に読みたかったので、3巻を先にした。この巻には『弟子』『李陵』『名人伝』といった名品のほか、未発表作品や学生時代に書かれた雑簒、メモに書きつけられた断片などが収録されている。未発表かつ未完の長篇『北方行』が眼をひいた。主人公の三造(作者の分身として他作品にも登場する)をはじめ、渡航先の満州で出逢った夫人とその長女。もと文学青年で、今は虚無的な人生観を抱く伝吉。かれらによる語りが相互に叙述され、中島敦には珍しい、多声的かつ多元的な構成となっている。2021/08/26
zumi
22
今年のベスト短篇、ほぼ決定しました。中島敦「名人伝」です。最高です。変な話好き必読。弓の名人を目指す主人公は、師から「瞬きしないことを学べ」と命じられる。そこで彼は妻の機織り台の下に潜り込んで眼とすれすれに道具が上下するのを瞬きせずに見詰める。(妻は驚愕。だが修行といって叱りつける)次は「見ること」を学ぶ。髪の毛に結んで垂らした虱を三年ほど見ていると虱が馬ほどの大きさに見えてきて、虱の心臓すらうち抜けるようになる。さてこれほど上達すればあと敵になりそうなのは師だけになるので、ついに師を除こうと企むが...2014/11/11