内容説明
昭和の銀幕を駆け抜けた鞍馬天狗。生涯、映画を愛し、女に惚れ、一銭の財産も残さずに逝った往年のヒーロー・アラカン=嵐寛寿郎が語った日本映画の裏舞台。いかがわしくも、魅力と活気に満ちていた映画界のようすが、竹中労の名調子に乗って甦える。山中貞雄、伊藤大輔、マキノ雅広らの若き日々がいきいきと描かれる、もう一つの日本映画史。
目次
序章 ただ見る池塘春草のゆめ
第1部 ああ、サイレント時代
第2部 雲の上から地の涯てへ
第3部 化天の中をくらべれば
かえりみれば半世紀
嵐寛寿郎名作劇場―サイレント版
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
駄目男
15
今の時代、鞍馬天狗なり嵐寛寿郎の名前をあまり大きな声で言えない。いつの時代の話と言われてしまう。併し、斯く云う私とて鞍馬天狗を映画で見たことがない。当然だ。嵐寛寿郎の鞍馬天狗などは戦前、戦中、戦後の話ではないか。だが、どういう訳か、杉作少年の何代目かに美空ひばりが起用されとのを知っている。そればかりか、少年時代のチャンバラ遊びは、鞍馬天狗と丹下左膳は無くてはならない出し物だった。戦前の話とて、一応、チャンバラ映画の七剣聖ぐらいは知っている。2021/11/18
fa
5
内容が尋常じゃない。このノンフィクションを読まずして何を読む。それぐらい濃いし、人を捉えている。名作。間違いない。
午睡
3
鞍馬天狗も見たことがない世代に属するが、それでも嵐寛寿郎という人間に興味を持って読んだ。京都木屋町の出身と聞いてああ、やっぱりと思う。こちらも京都花街の芸者一族の末裔で、竹中労が聞書きして正確に再現してくれた嵐寛寿郎の京都弁がじつに腑に落ちるのだ。玄人の使う京都弁が懐かしく、一気に引き込まれた。十歳で丁稚に出され、毎朝五時に起き荷車に油をさす日々。「京都の冬はさぶい、アカギレシモヤケ指など形もない、うんでくずれて」という過酷な少年時代。これもまたよくわかる。この生い立ちが名優を作ったのだなと胸に迫る思い。2019/10/06
uehara
1
アラカンへの聞き書き。去年(?)、読んでたがいろいろあったときに放置していた。「テテなし子は可哀そうや、戸籍などとゆうものはつまり便宜なものやから、それで人間ひとり将来が助かるのやったらどんどん貸したらよい。それが道理ゆうものや、他人はいざ知らずワテの道理でおます。」p.292。 竹中の『日本映画縦断』も読みたい。2025/09/30




