ちくま文庫<br> 慶州は母の呼び声

ちくま文庫
慶州は母の呼び声

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  • サイズ 文庫判/ページ数 505p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784480025609
  • NDC分類 916
  • Cコード C0136

内容説明

著者が筑豊に生活しながら独自の表現活動を展開してきた原点には、生れ育った“植民地朝鮮”での生活体験がある。自らをはぐくんでくれた風土への個人的愛着と歴史的民族的に負うべき責任とのはざ間に身を置きながら、これからの“アジアの中の日本”を考えるべく、原郷朝鮮とのかかわりを描いた表題作と85年春に40年ぶりに訪れた韓国を描いた「こだまひびく山河の中へ」の二作品を収める。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Midori Nozawa

14
1984年初刊(新潮社)で読了。涙が読了とともに湧いてきた。著者は昭和2年に韓国で出生。父は学校の教師だった。日露戦争に勝ち、韓国を併合した時代に、著者は植民した家族だった。オモニ(韓国語で母の意)の温かさに囲まれて子ども時代を送るが、日本は台湾、南方の国々、満州などに欲を広げていった。1940年の皇紀2600年を契機に益々皇国日本の聖戦という意味を持たせた戦争は激しさを増した。しかし日本の敗戦色が次第に濃厚になっていく。著者の父の思索や妻愛子35歳にて病死への悲しみや著者の弟の自死は深く胸を打った。 2022/09/25

wei xian tiang

3
大邱、慶州で多感な少女期を過ごした森崎さん。亡くなった私の祖父も大邱育ちであり、町や人々の描写に祖父の姿を索めるような気持ちで読む。「外地」の日本人植民社会には近代的な都市生活と多少リベラルな空気がある一方、そこしか知らない植民二世世代には祖国である「内地」は、封建的で生活文化も遅れた、若干恐ろしい所と映っていたとのこと。この視点は貴重。2014/01/29

Sachiko

1
日本植民地化の朝鮮南部で生まれ、17歳までそこで育った著者が幼いころの家族との生活や学校でのできごとを思い出す。当時、朝鮮の人々の日本に対する気持ちを何となく感じていたものの、理解はできていなかった。帰国後にそれを負い目のように感じながら生きてきた。語るのもためらわれたという。重いが、当時の日本人の子どもの目に移った朝鮮の様子やそこに暮らしたひとりの日本人の心の一端を知ることができる。2021/12/07

sumi

1
少女時代を植民地化の慶州道で生きてきた日本人の話。今私が住んでいる韓国嶺南地域の、親しみを感じ始めたいくつかの場所で、あの時日本人がどのようにして韓国人と接していたのか、幼い子供たちはそれをどのように見ていたのかが生々しい。最近読んだいくつかの本でも繰り返し思うのは、人は生まれや人種、国籍なんかで理解できるものではないということだ。生まれた環境やこれまでの経験をどのように飲み込んでいくかは、いつも自分次第。ただ、例えば国籍など自分と共通項を持つ者たちが過去に何をしたのか、それはよく知っている必要がある。2016/11/03

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