内容説明
同姓同名の男にまちがわれ、借りたこともない本の返済を迫られたり、見知らぬ人々のパーティに招待されたりと、ポーの「ウィリアム・ウィルスン」を彷彿とさせる作品「一族団欒の図、1945年」や、家族から見世物にされる怪物双生児の話など、本書は“文体の魔術師”ナボコフが、SF、ポルノ小説、童話、探偵小説などの体裁をとりながら、彼独自の世界を見事に結実させた短編集である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
83
1ダースとはいえ、収録されているのは13の短編でした。文体の魔術師と言われるに相応しく、様々な色彩の表情を見せてきます。その世界観はSF、ポルノ、探偵小説など色々で、どの話も美しさの中に皮肉やユーモアが含まれていました。読みやすいので、物語があっという間に終わってしまう印象はありますが、それがジェットコースターに乗っている気分でもあります。長編では味わえないナボコフを堪能しました。2016/07/07
藤月はな(灯れ松明の火)
28
訳文が何だか心太のようにツルツルして掴み辛いので読み辛かったです・・・。感覚的には「合図と象徴」、「いつかアレッポで」が好き。「マドモアゼルO」の時が流れてからの後悔の描き方は秀逸だと思います。2014/10/20
Kensuke
10
色々なタイプの短編が読めるのでナボコフ入門にぴったりではと思う。時々ポストモダンが自意識が過ぎる気がして、ストーリーテリングのダイナミズムが欠如している気がしてややうんざりした気持ちになることもあるけど、巧さはご存知超一級品。「フィアルタの春」、「初恋」、「夢に生きる人」が良かった。2020/02/04
ニミッツクラス
9
91年のちくま文庫の初版(640円)。79年と86年(新装)にサンリオ文庫で出ている。表題の“一ダース”に対して実際には13編収録で、解説によると正味多めのサービスらしい。各話とも丁寧に書き込んである・・が、巻頭の「フィアルタの春」を読んで著者の感触を掴んだつもりになったら大間違いだ。叙事の隙間から立ち昇る抒情に感心しつつも、語彙豊富ながら出来の悪いブログのような筆致に苦労する。周囲に気軽にお勧めできる本ではないなぁ。13話目の「ランス」はSFチックで比較的読み易い。「夢に生きる人」には共感。★★★☆☆☆2015/12/16
hikarunoir
8
短編は苦手だが、翻訳者の格闘が偲ばれる多彩な言い回しの短編たち。先読みできず、オチなしも多く、奇想に溢れてもおらず、案外私的な話が多く意外。2022/07/10