内容説明
町を出た少年が迷い込んだのは、ゴーストでいっぱいのジャングルだった。耐えられぬ悪臭を放つもの、奇妙なかたちをして不思議なしぐさをするもの…。ヨルバ族に先祖から伝わる物語をふまえて、ドラム・ビートに乗せて紡ぎ出される幻想の世界。ナイジェリアに伝わる伝説をもとに紡ぎ出された幻想文学。『やし酒飲み』に続き西欧合理社会に衝撃を与えた傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
102
戦争から追われて主人公は7歳で幽鬼が住むブッシュ・オブ・ゴースツ界へ迷い込む。『やし酒飲み』とのリンクも僅かにあるが人間視点に立つなど趣きは異なる。魔術や邪な風習を持つ幽鬼たちは人間に九割方意地悪、主人公を待つのは変身や生贄などの散々な恐怖。一方、二度も結婚したりと彼なりに適応しており、放浪は24年に及ぶ。醜い老婆を追う場面や後日談は、奇怪なものに魅了される著者の思考がよく現れているし、従兄の登場はキリスト教が彼らにいかなる刺激を与えたかが窺える。「これは憎しみがどういう結果をもたらすかという話なのです」2021/10/10
らぱん
49
「やし酒飲み」に続いての二作目を読んだ。本作も素っ頓狂な魑魅魍魎が跋扈する異界の奇天烈な冒険譚だが、前作との違いは主人公は望んでその世界へ行ったわけではないことで、戦時中の継子虐めの結果としてブッシュ・オブ・ゴースツに逃げ込んでいる。ぶっ飛んだ物語はやはり面白く楽しいが、魅力を近代以前のプリミティブで自由な発想に感じ、整合性や合理性などの重視が物語をつまらなくすることを思った。「悪」とはどういうことか「善」とはどういうことかという問いかけで始まる物語は、憎しみがもたらす結果というお話なのだと結ばれる。↓2019/10/29
areazione
8
まだ「善悪」もわきまえないほど幼い子どもが、戦禍から逃れようとしていると、天と地の間にある「幽鬼(ゴースト)」の世界へ迷い込んでしまったんだって。子どもは一体どうなるの?さあさチュツオーラおじさんの与太話が始まるよー!ブッシュ・オブ・ゴースツの世界では、断ったりすると不思議な力で死ぬことになるのが当たり前です。「アフリカではよくあること」を存分に愉しみましょう!2015/11/05
三柴ゆよし
7
原題は「MY LIFE IN THE BUSH OF GHOSTS」だから、直訳すると「幽鬼の森での我が生活」。アフリカで「GHOST」というと、いわゆる幽霊のことじゃなくて、日本でいうところの妖怪・化け物の類を指すらしい。『やし酒飲み』の世界とほんの少しだけリンクしているので、併せて読むとより楽しめるかも。にしても、「無敵忍術使い」って原語ではどうなってんだろ。すげえ気になるんで、もし知ってる人がいたら教えてください。2009/06/05
tenkawa
5
クリスティーナ・デ・ミデルの「This is what haterid did」という写真集や写真展は、この本に触発されて制作されたそうで、無性に読みたくなった次第。「ブッシュ・オブ・ゴースツ」という常識の通じない不思議な場所に入り込んだ少年の嘘みたいな何十年にわたる放浪の話。この小説、いわゆる普通の物語のお約束、流れ、盛り上がり、などから自由。まんが日本昔話のような。とは言えこれは紛れもなく異国。僕が漠然と抱くアフリカの未開のイメージが強くここにある。淡々としすぎるがゆえ余計に。揺さぶられた。2016/05/27
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