内容説明
セーヌの川底からお化け潜水夫に水死体が運び去られた。それを目撃したヴァランタン・ムーフラールも水死体となって、所もあろうにエッフェル塔の上に現われ、おまけに幽霊船『飛び行くオランダ人』号船長の契約書までも添えてあった。血の気の多いパリっ子を巻き込んで次々おこる怪事件、登場する怪人物、深まる謎…。エッフェル塔の構造の秘密という奇抜な着想から繰り出される奇想天外な物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんすけ
17
現実にはあり得ない話ばかりが登場する。 だが読者はストーリに現実を見出す。なんとも可笑しくて奇妙なカミの世界だ。 潜水夫は水に潜るものだが、エッフェル塔の上にも登場する。カミ独特の世界は、その理屈を追うこともなく奇怪な話が続いていく。大方の読者は阿保臭くなって読むのを止めるだろう。最後に謎が解き明かされるが、どうも誤魔化しなんじゃないかと思われるくらい阿保臭さい。 しかしこの阿保臭さこそがカミの世界なのだ。 10歳前後でルーフォック・オルメスの世界に耽溺してしまったぼくは、この阿保臭さを愛し続けている。2020/10/05
shiaruvy
4
【1990.08.28 初版】 カミは大好き作家なので,書店で見っけた瞬間に脇目も振らずレジ直行。 げらげら笑い読む。2017/08/13
あくび虫
3
最後の最後まで惑わされました。内容と言うか、作風に。これはライトな読み物なのか、むしろ逆か、いや社会風刺かもしれん、と。結論は出ません(笑)序盤はオカルトかミステリかも不明です。――しかし、最後はなぜか几帳面にまとめていきます。力技に近い部分もありますが、そもそも目くじらを立てる本ではないと思う。――無軌道かと疑うくらいぽんぽんキャラが増えるのが、なんだか面白かったです。最後に急に出張ってくる人や、メインなのに影が薄くなっている人……なんにしても、みんな魅力的。愛おしい感じです。2016/08/08
きゅー
2
幽霊船、美女が誘拐、降霊術などのコッテコテの道具を使った、きわめてエンターテインメントな冒険活劇。ちょくちょく見られるご都合的な偶然が目につくけれど、それも含めて冒険活劇。訳者あとがきでも書かれているように、読み終わったらすっきり後に残らない爽快感が良いです。ただ、話の論理はつながっているけれど、最後の方はむりやりな気がしないでもない。2011/08/04