内容説明
日本近代建築史の研究者たちが、ある日街を歩いていて由緒ある西洋館や古い街並を発見した。その娯しみに病みつきとなった人々が「東京建築探偵団」をつくり、都内を徘徊し、古い建物、変った建物を探し、記録する作業をはじめた。本書はこの探偵団の主唱者による東京の建物にまつわる面白い話の発掘記である。楽しく読みすすむうちに、世界に例のない構造をもつ東京という都市空間が鮮やかに見えてくる。稀有な東京論・都市論の本でもある。
目次
正しい建築探偵のやり方―今和次郎のフルコース
犬も歩けば…―看板建築
街角にダダイズムが立っていた―東洋キネマ
全長335メートルの秘境―東京駅
皇居が見つかった―皇居前広場
ネクラのマッカーサー―横浜ニューグランドHと第一生命館
病院は流血と笑いの図像だらけ―聖露加国際病院
西洋館は国電歩いて3分―鏡子の家
東京を私造したかった人の伝―兜町と田園調布
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れみ
94
建築史家の人々が東京の街を歩き回り発見した建物や街並みを記録する作業にまつわるエピソード。ちょっと変わった建物や歴史のありそうな建物をみてオッ!と思うことはあっても深く考えたことはあまりなかったようなその土地柄や建物がつくられる経緯などがそれぞれにあるということに気づかされた。聖路加国際病院の路加の意味や渋沢栄一さんの人生について知ったり…山下洋輔さんの解説にもあるように新しい世界が自分のなかに開けてくるような感覚があった。2017/09/23
ぶんこ
45
外出のたびに携行して空き時間に読みました。ちょうど聖路加に行った時を狙って聖路加病院を読みましたが、タワーが出来る前の古い聖路加病院を知っている者としては感慨深い。11月にはトイスラー記念館の一般公開もあるので楽しみです。(往復葉書による抽選)ほかに興味深かったのが看板建築と東京駅、渋沢栄一。ここまで調べるか!というオタク感に感服。建物だけではなく、著者ご本人に興味が湧いてきました。2019/10/04
saga
40
『建築探偵術入門』から正しく本書を読む。前著は写真と建築物の説明で紙面が尽きた感があったが、本書はそれらの中から選りすぐりの物件をじっくり味わえた。そして、著者のユーモアあふれる文章に惹き付けられた。東京駅は、3階部分も復元されたが、じっくり見ると3階と2階のレンガの違いが分かって面白い。いま話題の渋沢栄一も、幕末の動乱期から三井、三菱との都市開発を巡る駆け引きまでのエピソードを知ると、俄然興味がわく。東京駅丸の内側の土地が三菱地所で占められた訳を知ることもできた。収穫多し。2019/09/07
Norico
31
赤瀬川さんのトマソン芸術に通じる、生活の役には立たないけど、生活を豊かにしてくれるものたち。看板建築なんて、実家もそうだったけど、気にしたことなかったもんなー。もっと大事にみておけばよかった。田園調布を作ったのが渋沢栄一だったとは!色々な驚きに満ちた一冊でした。2017/04/30
夜の女王
26
長年途中まで読んでほったらかしだったものを再読。藤森ファンなのに何故か積読。読んでて理由が分かった。ここの書かれている建物のほとんどが現存してない。やるせなかったんだな~。が、再読しつつ調べてみると、結構な建物が江戸東京たてもの園に移築されている!藤森氏、伊達に園長やってる訳じゃなかった!そうすると俄然興味が湧いてきて、この本を書いたころの東京を想像しながら、あっという間に読了。今はコロナで聖路加も東京たてもの園の建物内も立ち入り禁止だけど、落ち着いたら藤森氏の足跡を訪ねてみたい。2020/09/17