内容説明
「そうです。皇帝の1日は、通報者たちの報告を聞くことから始まります。危険な企ては夜生まれます…」。密告制度を張りめぐらし、飼いライオンにしか心をひらかなかった“哲人皇帝”ハイレ・セラシエ。世界最古の帝国に君臨した独裁者の、孤独と猜疑にみちた権力の日々が、そして暗黒政治の実態が、当時宮廷に仕えた召使いたちの生々しい証言によって、赤裸にあばかれる。いま静かに上がる、エチオピア帝国崩壊のドラマの幕―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shusseuo
3
宮廷の内側からエチオピア帝国終焉を綴るオーラルヒストリー。極端に変化を嫌う、相互監視が張りめぐらされた抑圧的な独裁体制、はびこる猜疑心。建国以来数千年、飢餓は日常だったから問題と思わなかったという役人の証言に驚愕。啓蒙君主ハイレ・セラシエの開明的な改革も寄る年波とともに衰えるのが悲しい。ところで、陰鬱な密告を逃れるために人びとが身につけたという文法も単語も全く違う別の言語、とは何なのだろう。単純に外国語なのか、それともクレオール言語的なものなのか。2014/07/10
千住林太郎
2
本書はエチオピア皇帝に仕えた人々へのインタビューを通して、帝政崩壊の過程を描き出している。インタビューを受ける人が皇帝への忠誠心と帝政への美化を行うため、辟易する箇所があるけれども、著者の考察が冷静なためバランスを取って読むことができる。開明的な改革を実施したゆえに、国の未来を憂うる知識層が出来上がったことのみならず、解決できない飢餓問題・専制君主制ゆえに本人の能力に依存する統治の欠陥、これらが絡み合い帝政崩壊へと至る様は圧巻である。国が亡びるということはこういうことだと教えてくれる。2023/06/10
Jirgambi
2
皇帝に「忠実な」側近達の言葉全てを文面通りに理解は出来ないが、ひしひしと帝国崩壊への過程は、皆が感づいていたようだ。どの帝国の事例でも、帝国末期の雰囲気は完璧に記録するのは、きっと不可能だろう。ただこの本は、当世の人が抱く雰囲気を知る補助資料たり得ている。面白い。あと、(本書が手元に無いのでうろ覚えだが)「人に考えさせてしまう事」は崩壊への前触れか、…。2018/08/26
十一
2
立体的に浮かび上がる、独裁の構造2013/09/23
j1296118
1
皇帝の身近に仕えた人々の告白集を通して語られる、バイナ・レフケムことメネリク一世以来三千年に及んだ(事になっている)エチオピア帝国最後の日々。 ドア番・玉座の足台係・時間を知らせるお辞儀係(陛下のカッコウ)が誇り高く語る高度に専門的な職務は、実際高度なのだろうが少々笑う2016/01/06
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- 和書
- 読本押切順三