内容説明
若い娘の肉体をすみかにし、映画俳優として成功するハンサムなノミの話、マネキン人形に恋をして身を滅ぼすノイローゼ気味のデパート店員の話etc.―ブラックユーモアと諷刺にあふれた短篇21。プロット・性格を念入りに加工し、複雑奇妙な味に仕立てあげられた作風は、ありきたりの小説に倦きた「すれっからし」の読者にも歯ごたえ十分。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
sabosashi
8
奇妙な、というより辛辣な、と形容したほうがふさわしいような短篇集。 この苦さには、書き手の性格やら世界観がじかに反映されていると思ってしまうのだが、そういう考え方は邪道だろうが。「緑の木かげ、みどりの思い」なんてコルタサルのノリのような気がしたが。この書き手の腕はたしかなのだろう。こういった苦さというものは、えてして読み手に淫らな歓びをあたえてしまいそうでもある。通じ合うものがあるからなのだろう。いつになく早く読み進められた。ストーリーの勝利か。2021/08/04
くさてる
4
いわゆる「奇妙な味」系の短編集。時代の流れには対抗できない作品もあったけれど、いまでも十分に気味悪さや不思議な後味を残す作品の方が多いのがさすが。夜寝る前に1,2編ずつ、少しずつ時間をかけて読んでいくのがおすすめです。2013/09/04
しろ
4
☆5 奇妙な味系書き手であるジョン・コリアの作品集。その仕組みや意図がうまいというよりは、主張がはっきりしていそうな感じの作品が多い気がする。しかし、訳文か何かが僕に合わなかったのであまり楽しめなかった。奇妙な味系は好きだけど、その中では微妙。他の作品を読むか、他の訳者で読むかしたらはまりそうでもあるけど。この中では、「ある恋の物語」「葦毛のウマの美女」あたりがよかった。2012/05/09
donut
3
希代の風刺作家ジョンコリアの短編集。軽快な文体だが、結末は救いがなく、登場人物は皆陰湿。人間と人生に絶望した作家特有の空元気、良い意味での投げやりさが感じられる。ゴリラが作家になる「ある主題の変奏曲」とボルヘスが好きそうな「霧の季節」がお気に入り。2018/08/12
Mark.jr
2
冒頭のハンサムな蚤が主人公の話から分かる通り、所謂"奇妙な味"に相当する短編集です。しかし、奇妙とはいっても天然で野放図な感じではなく、スーツでピシッと決めた貴族的な印象を受けるところに、イギリスらしさを感じます2020/01/27




