内容説明
詩人から小説家に「溝跨ぎ」した著者が、人形浄瑠璃の作者から楽舞伎へそしてまた人形浄瑠璃へと2重の「溝跨ぎ」をした近松の世界をあざやかな手口で考察する。「曾根崎心中」「心中天の網島」「女殺油地獄」などにふれながら、生きた日本語でドラマを表現することの意味を問い直す力作エッセイ。
目次
ウタとカタリ―曾根崎心中
闇からもれる言葉―冥途の飛脚
事実への想像力―鑓の権三重帷子
みちゆき勝手解釈―心中天の網島
劇としての浄瑠璃―女殺油地獄
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
がんちゃん
1
近松門左衛門は人形浄瑠璃のために書いた(歌舞伎のためにも書いたけど)。そこには物語をかたる太夫さんがいて、三味線をひく人がいて、人形を操る人がいる。また照明もあれば舞台装置、舞台衣装もある。みんなあわせて人形浄瑠璃なんですね。当たり前だけど、近松の名前に引きずられて、それを文学作品として見てしまうと、見えなくなってしまうもの。そんなことをこの本は教えてくれました。2015/12/29
みつひめ
0
今まで、文楽や歌舞伎で見ていて、疑問に思っていたことについて「こういう見方をしてみれば?」という、見方・読み取り方のヒントを示してもらった。たとえば、心中の道行はお祭りの行列と同じような意味を持っている、とか、「女殺し油地獄」の徳兵衛の性根とか。いつも現行の床本や台本しか読んでいないので近松が書いた台本を読んでみようと思わされた。2012/02/21