出版社内容情報
敗色濃い状況のなか、戦火に追われつつも旺盛な執筆活動がつづく。昭和19年7月「津軽」、20年2月「惜別」、同年6月完成の「お伽草紙」を収録。
昭和19年5月12日から6月にかけて、津軽地方を取材旅行、7月、「津軽」完成。12月、仙台に赴いて魯迅在留当時のことを調査、それをもとに20年2月、「惜別」によって若い日の魯迅の思想的苦悩と変転を描き上げる。引きつづく空襲警報下の3月、「お伽草紙」執筆にとりかかる。6月末、「お伽草紙」完成。敗色濃い状況のなか、戦火に追われつつも、旺盛な執筆活動はつづく。
目次
津軽
惜別
お伽草紙
内容説明
昭和19年5月12日から6月にかけて、津軽地方を取材旅行、7月、「津軽」完成。12月、仙台に赴いて魯迅在留当時のことを調査、それをもとに20年2月、「惜別」によって若い日の魯迅の思想的苦悩と変転を描き上げる。引きつづく空襲警報下の3月、「お伽草紙」執筆にとりかかる。6月末、「お伽草紙」完成。敗色濃い状況のなか、戦火に追われつつも、旺盛な執筆活動はつづく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
64
長編が3本入っていたので読み応えがありました。戦火に追われつつも執筆の筆はまさに小説の極みと言えるでしょう。旺盛な執筆欲が感じられます。2020/05/09
優希
49
戦火に襲われつつも旺盛な執筆生活は変わらないようです。長編3編がおさめられていますが、どれも読み応えがありました。2023/04/30
ころこ
42
『津軽』『帰去来』で描かれたのは、実質的に出禁になった実家との関係修復のようでいて、ずっと変わらず太宰を待っていた草木と家という故郷であった。本作は故郷を紹介しているようでいて、故郷と和解するための出会いを果たす。疎くなったはずの故郷を、緊張が解け嬉しくなった勢いで余所者の読者へ紹介するというのが、いかにもお人好しの太宰らしい。あの土地は色々良いところがあるが、まあ、最も良いところはひとが良いところだよ、とでも言いたげだ。「5西海岸」では、亡父の実家を訪ねる。逡巡しつつ、思い切って玄関に声を掛ける、その直2023/04/27
H2A
10
『津軽』語り口の巧みさ、戦中末期の人々の意外に明るい暮らしぶりや、津軽や生家に抱くアンビバレンツがとてもいい。肝心の竜飛岬が軍機のために簡略すぎるのが残念。『惜別』後の魯迅となる「周さん」の仙台での交流を描く。周さんの人物像は太宰自身の影が濃厚だが、3作中ではもっとも面白い。『お伽草子』空襲下で描かれたという物語で、作者のストーリーテラーぶりを期待していたが裏切られた。ユーモアはあるが作者自身が表に出過ぎて鼻につき、正直に期待外れ。ちょっと自意識過剰では?2015/12/13
根本隼
4
収められている作品全てが傑作 特にお伽草紙は、既存の昔話に太宰の想像を加え、全体にユーモアを漂わせつつ人生訓のようなものも(従来のものとは違う)最後に附している。彼の才能が結晶していると感じた2017/12/22