内容説明
5600枚におよぶ近代日本百年にわたるドラマの完結篇。戦後、新たに出直した新宿中村屋は、苦難のうちにも発展し、次代へと受けつがれていく。敗戦の混乱と無秩序の激動期に、石川三四郎、柳田国男、中野重治ら知識人は、何を考え何を願っていたかを中心に、戦後の日本と日本人の動きをとらえ、さらに作者が自ら一登場人物となり軍隊の姿を描き出し、天皇制・戦争責任の問題などに触れながら、現在の「うつろな繁栄」の正体に迫ろうとする大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
格
3
中村屋の再興を見届けた愛蔵と良(黒光)がこの世を去ることで、第一部から活躍した人物達は軒並み退場した。しかし、この小説は終わらない。代わって僕(即ち作者自身)が前面に出てくることになる。偽名で登場させた人物の消息を訪ねる等『安曇野』への自己言及も多く、ともすれば小説の枠を越えたあとがきのようにもとれるが、そうはせずにあくまで『安曇野』という小説の一部として書いたところに、小説という形式がもつ包容力への信頼(その小説に『安曇野』という名をつけたことからすると、期待といった方が良いかもしれない)を感じさせる→2024/12/04