出版社内容情報
犀利な文芸批評から始まり、やがて共同体間の「交換」を問うに至った思想家・柄谷行人。その中心にあるものは何か。今はじめて思想の全貌が解き明かされる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
40
各章が柄谷のその時のテーマごとにまとまっており、その都度転じる柄谷の仕事を概観したい読者にはうってつけの本です。しかし問題は、著者が世代的、心情的に柄谷との距離が取れていないことにあります。解説書であって批評ではないことに加えて、最終章では柄谷の運動と運動論を使って自説を述べてしまっています。典型的な左翼知識人に回収されてしまっては、柄谷の「可能性の中心」はむしろみえてこないと思うのですが…他方で「徹底化することで自壊させる」前期、世代的に著者が論じられるマルクス主義の第4章に多くの発見がありました。2021/05/06
呼戯人
9
8月29日に柄谷行人の講演会を聴きに行って、ああ、この人は常に動き、変化し新しい視点を獲得しようと努力し続けている人なのだなあという感想を持った。講演は非常に繊細な人柄を反映して、流麗というものではなかったが、柄谷の最新の思想に触れることができた。その勢いで柄谷の地図を手に入れようと思って、この本を手に取った。変化し続ける柄谷がある一方、デビュー当時から変わらないテーマがずっと続いているのだという理解が生まれてきた。それは、意識の外から意識を襲う反復強迫的な自然があるという認識である。2015/08/31
yamahiko
9
かつて柄谷氏の著書隠喩としての建築を背伸びして読んだときの衝撃を懐かしく思いだしました。いつごろからか哲学書は読めないと自分自身に諦めを感じていましたが、再挑戦のきっかけを作ってくれそうな本でした。ありがとうございました。2015/06/28
Yasomi Mori
7
人間がなにかを信じるとき、そこには必ず、論理的な説明にはしつくせない「飛躍」が生じている。柄谷はこの「飛躍」——それはまた自己解体の契機でもある——の問題に向き合い続ける思想家であった。言語学における固有名の問題、マルクスが解明した商品の「価値」をめぐる形態論、あるいはキルケゴール的な信仰の根本にあるもの、フロイトやニーチェの思想、こうした問題の数学的表現としてのゲーデル「不確定性定理」etc。〈他者〉の問題をとおして現代資本主義の超克をめざす柄谷の一連の仕事がコンパクトに整理された良書。おもしろかった!2016/03/10
hasegawa noboru
3
支配を強める資本=ネーション=国家のグローバル資本主義システムを越える新たなアソシエーションの形成はいかにして可能なのか。柄谷行人の壮大かつ難解な思想の足跡を〈柄谷の著作を当初から伴走するように読んできた〉という筆者が、寄り添うように要約し問題点も指摘しながら解説してくれる。一九九六年時点で柄谷の世界認識の予測に触れ、(津波と原発の破局を前に)〈人々の政党への不信が高まる中、元首相の孫で稚拙なナショナリズムを唱える以外これといって特徴をもたない凡庸な人物が首相の座に就き〉予想外の支持率を得ている不気味! 2015/05/03