出版社内容情報
暫定的で可謬的な「正しさ」を肯定し、誰もが共生できる社会構想を可能にするプラグマティズム。デューイ、ローティらの軌跡を辿り直し、現代的意義を明らかにする。
内容説明
誰しも人は、宗教や道徳など、何らかの「信念」を抱いて生きている。異なる「信念」同士が衝突し、それが深刻化すると、凄惨な争乱になることすらある。我が「信念」こそ、絶対に「正しい」と信じて疑わないからだ。そうした対立を超克し、互いの差異を肯定しながら、協働し共生するための哲学とは何か?パース、ジェイムズ、デューイ、クワイン、ローティら、プラグマティズムの重要人物を取り上げ、その思想を概観しつつ、現代社会における連帯と共生の可能性を探る哲学の書である。
目次
第1章 プラグマティズムの誕生
第2章 信じることを肯定する
第3章 生き方としての民主主義
第4章 共生と連帯のための原理
第5章 さらなる「連帯」へ
第6章 リベラルで民主的な社会へ
著者等紹介
大賀祐樹[オオガユウキ]
1980年生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。哲学者。早稲田大学社会科学総合学術院助教を経て、聖学院大学非常勤講師。英米圏の思想史を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
32
現在を生きる私たちにとってのプラグマティズムという思想の意義を解説していく。パース・ジェイムズ・デューイにとどまらず、クワインによる再発見、補助線としてのクーンやロールズ、そして直近のローティまで、端的にわかりやすく紹介。正しさのない世の中でとりあえずの正しさを置くこと。理解しあえないと思わずに、相手の理屈を事実として認識すること(カウンセリングだ)。橋は、架かる。◇ショーンの省察的実践、ワークショップ、宮本常一に手塚治虫、自分が魅かれるものが皆、この思想の周りにあるように思える。まだまだ展開できそうだ。2018/02/27
壱萬参仟縁
29
クワインはプラグマティズムの再発見者(042頁~)。 生き方としての民主主義(112頁~)。生存させないような政治では民主主義とは言えない。権力者の独善で、社会は滅びる。 合理的で道理的な市民(135頁~)。自由で平等な人格を持つ一人の市民(137頁)。 2015/04/29
ふみあき
20
この手の入門書としては、相当平易に書かれている(が、それでも抽象的思考が苦手な私は手こずった)。ブラグマティズムは哲学的思弁を廃して歴史的経験を重んじる点、また感情に重きを置く点では共同体主義的で、何となく孟子を連想した。特にローティの、正義の原則も「拡大された忠誠心」に過ぎない、という言葉は印象的。クーンのパラダイム論では「事実に関する命題」と「価値に関する命題」に差はないとされるが、相対主義でも非実在論でもないというから、ややこしい。またロマン主義との類縁性もあるが、啓蒙を否定しないという点が異なる。2021/09/02
しょうじ@創作「熾火」執筆中。
17
【図書館本、1回目】難しかった。わからなくても、とにかく目を通した。プラグマティズムを、パースからデューイに限定せずに、トマス・クーンやロールズ、ローティなども援用して、信念の「共約不可能性」を乗り越える思想として位置づけようとする試みと理解した。ただし、そうした迂回路を経た上で、「相互理解」のための「対話」の重要性・必要性を主張するというのは、いささか遠回りに過ぎはしないかと思ってしまった。アメリカの思想を理解する上で、プラグマティズムは避けて通れないと思うので、もう少し頑張りたい。2017/07/27
ほし
14
アメリカ生まれの哲学、プラグマティズムの視点から、いかに現代の対立を乗り越え、連帯・共生していくかが語られる一冊。これまでプラグマティズムはあまり学んだことが無かったのですが、中々面白いですね!真理を否定しつつも、なんでもありの相対主義をどう回避するかという課題に対して、プラグマティズムはそもそも真理かどうかを重要視せず、ある事象が道具として有用であれば「それなりの正しさ」があるとし、多元性のある正しさの中で「重なり合うコンセンサス」を築くことでの連帯を模索するのだと理解しました。2020/10/18
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