内容説明
医療現場にはさまざまな倫理問題が横たわる。脳死判定、臓器移植、尊厳死や安楽死、人工妊娠中絶、再生医療…。目覚しい医療技術の進歩に伴って、既存の知の枠組みでは捉えきれない難問も増えている。私たちはこの厄介な問題をどう考えればいいのだろう。臨床医であるイワタ先生が、倫理の専門家であり“患者”でもある二人の哲人を訪ね、自分の身体との向き合い方から理想の死まで、縦横に語り合う。
目次
第1部 医療はラグビーチーム型で―鷲田清一×岩田健太郎(医学部は特殊?;患者の枕元に;かかりつけ名医 ほか)
第2部 自分の身体の声を聞く―内田樹×岩田健太郎(喫煙は悪なのか;現実感が変わる;頭にキック ほか)
第3部 医療は社会の成熟度を映す―鷲田清一×内田樹×岩田健太郎(ある「殺人罪」;脳死の生命維持装置;幸福な死 ほか)
著者等紹介
岩田健太郎[イワタケンタロウ]
1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。米国アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院勤務などを経て、神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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プチライス
6
鷲田氏が「これからの医療では、生のみならず死というものにも開かれていなければいけないと思っています」と言えば、内田氏は「死の問題はやはり、まず死ぬ本人がね、どれくらい楽に死ねるかということが問題の軸になるべきだと思うんです」と言う。痛みは「記憶」であり、「極めて主観的なもの」であり、「自分でしか治せない」とも。激痛は「人を「今」に閉じ込め」「未来や過去と言う不在に意識をつなげられない」から、「人間の尊厳を守るのに緩和ケアが必要になる」。ホスピス入院中の義父のベッドの横で読むには生々しいが、実感もって読む。2014/09/30
Satoshi Hara
4
んん?となる箇所もいくつかあったけど、さすがの御三方でした。倫理的であるとはどういうことか、語源のギリシャ語から意味の広がりをとらえる、問題のコンテクストをちゃんと見られるか、プロフェッショナルとは、時間をずらす、チームで何かをするときにまず必要なもの、Try to learn something about everything and everything aboutsomething、ありがとうは健康と長寿を願う祝福の言葉、時間は脳内現象、など多くの至言が詰まってました2022/02/11
しゅんぺい(笑)
4
うむ、この三人なら、おもしろくならないわけがない。と思っていたら、そのとおりでした。 個人的には三人での鼎談よりも、鷲田さん、内田さんそれぞれとの対談のほうが好きでした。ただ、内容が詰まりすぎていて、一度読んだだけでは足りないなぁ。 物腰がやわらかい姿勢、考え方のなかに、正しいものがある気がする。そんな思いをつよくした本でした。2014/11/23
coldsurgeon
4
岩田健太郎・内田樹・鷲田清一、大好きな3人の、医療に思う対談集。時として難しく、しかし、心にカーンと響く言葉がある。2014/06/28
橋本 さゆり
3
私にとってはすごくおもしろい内容の本でした。内田樹さんの意見にわりと賛成派でしたね。医療の世界では二元論で語られがちだということでしたが、医療以外の世界でもわりとゼロヒャクで考えることって多いなと感じますし、正しいか正しくないかでしか物事を選択できなくて苦しんだり(体験ありです⬅)、なんかしょうもないことにとらわれてたなと今は思います。あと、日本のアメリカ化って話もあって、これからの世の中ほんとうにそれでいいの?って感じました、今も感じてます、ほんとうに。2017/04/19
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