出版社内容情報
正しい字源を探るための方法とは何か。『説文解字』から白川静までの字源研究を批判的に継承した上で到達した最先端の成果を平易に紹介する。新世代の入門書。
内容説明
世の中に流布している漢字の字源説の中にも、実は誤りが少なくない。それでは、「正しい」字源とは何なのか。どうすればそこに到達できるのだろうか。『説文解字』から白川静・藤堂明保まで、従来の字源研究を批判的に継承しながら、近年整理されつつある資料の活用と、科学的な方法論によって得られた最先端の成果を平易に紹介する。漢字の原点に関心を持つすべての人に送る新世代の入門書。
目次
第1章 漢字の誕生と継承
第2章 漢字の成り立ちと三つの要素
第3章 字源研究の歴史
第4章 字音からの字源研究
第5章 字形からの字源研究
第6章 字義からの字源研究
第7章 最新の成果
著者等紹介
落合淳思[オチアイアツシ]
1974年生まれ。立命館大学大学院文学研究科博士課程修了。専門は中国の古代文字と古代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koning
14
白川の呪術に傾倒し過ぎた事とか、新しい資料にあたらないあたりへの突っ込みは素晴らしいのだが http://togetter.com/li/655922 で語られるように戦国期の竹簡への言及が無さ過ぎて、ここ10年分位無駄にしちゃってる感が残念なところ。そうはいっても良い本だと思うし、戦国竹簡のデータを加えてやればこの方向性でかなり良いとこいくんじゃないの?という感じがして宜しいかと。 2014/07/08
斑入り山吹
7
落合節炸裂。過去のビッグネーム3人の失敗を丁寧にあげつらった、といえなくもない。30年ほど停滞していたこの分野に切り込みました、みたいな。というわけで、もちろん気に入らない人も多そうなのではあるが、それでもそれは過去の失敗から学んだ、ともいえるわけで、へぇ!が続出なので読み進む。やはり甲骨文字がメインの内容なので、金文や篆書を読めるようになりたければ、ほかの本を探さなければならない、ということが分かった次第。 甲骨文字全文検索データベースにもアクセスして、フォントもダウンロードしてしまったよ。2015/09/04
isao_key
7
タイトルとは別に、具体的な漢字の成り立ちについての記述は、約30ページに留まる。他に漢字の誕生と継承が約20ページあるものの、本書の中心は先行の研究者、加藤常賢、藤堂明保、白川静の学説に対する批判となっている。一定の評価を得ている大学者を批判するのは、勇気がいることであるし、研究とは常に新たな発見や、新説が起こり旧説が覆されるのは理解できる。だが本書は一般向けの漢字の起源を扱った本だと思って購入した読者からすれば、先行研究批判は学会誌や専門書で論ずるべきことであるし、学者としての謙虚さもどうかと思う。2015/01/07
kokada_jnet
7
いままでの、ゆるい「漢字本」を駆逐する「こういう漢字本が読みたかったんだ」という内容。漢字の歴史と、字源の研究史とを明解に説明して、最新の研究内容からから批判。特に白川静の研究を「呪術儀礼を重視しすぎた」としているのが、腑に落ちる。2014/05/14
BIN
6
甲骨文字からの漢字の成り立ち(字源)に関する最新情報。歴代の日本の字源研究者(加藤、藤堂、白川など)の研究に関する批評もある。批評の言葉(特に白川)はなかなか厳しい。加藤、藤堂らは字音から字源を評価したみたいだが古代の字音なんてどうやって復元するのか想像つかない。白川は多くを祭祀に字源を求め固執したため誤りが多いと、白川の漢字ものをよく読んできた私としては衝撃的でした。中国の研究は説文解字に引っ張られてるところがあってあまり進展なさげなんですかね。甲骨文字のデータベース化はすごいな。2022/12/02