出版社内容情報
日本経済の復活には、賃上げを行い、資金循環の再始動が必要だ。苦しまぎれの金融政策ではなく、労働政策を通じて経済全体を動かす方法を考える。
内容説明
日本経済が力強さを取り戻せない。その原因は、過剰な企業貯蓄にある。90年代以降、企業は国内投資と人件費を抑制し、内部留保を増大させた。その結果、経済全体の資金循環が大幅に狂った。経済を正常に戻すには、賃上げを行い、資金循環の再始動が必要だ―。本書では、市場メカニズムを分析し、(苦しまぎれの金融政策ではなく)労働市場を通じて経済を動かす方法を考える。正統的なマクロ経済学者による、大胆で現実的な日本経済論。
目次
第1章 成長と循環のあいだ
第2章 増大する非正規労働者をどうとらえるか
第3章 ミドルの不満と閉塞の構造
第4章 要塞化する日本企業
第5章 自分を見失った政府
第6章 少子化と家庭の変容
第7章 立ちすくみの構造
著者等紹介
脇田成[ワキタシゲル]
1961年京都府生まれ。マクロ経済学者、首都大学東京大学院社会科学研究科教授。東京大学経済学部卒業。博士(経済学)。日本経済を総体的に論じる視点をそなえるマクロ経済学者。内閣府経済の好循環実現検討専門チーム会議委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
21
キーワードはゴシック太字。 GDP実質成長率3%はマクロ経済で大きな意味を持つ(034頁)。 異次元の金融緩和というときに、それでも銀行の預貸率は減少。 実体経済の企業=凧は、資金不足という張った糸ならゆるめて緩和すればいいが、 ゆるんだもとでは有効ではない(048頁)。 非正規待遇の不満と、低所得による需要減少で、ワークシェアリングもあまり有効ではない(073頁)。 昨日はハロワでいろいろと不満を述べてきたが、引きこもりやNEETがカードを持っているとは限らない。 2014/03/06
まゆまゆ
2
人口減に対応する社会にならなければこの先に未来はない。少子化対策を目的とした社会保障の充実が不可欠であり、そのためには賃金アップが必要。真新しい発見は特にはないけど、納得の内容。2014/04/11
schole
1
今年発売になった「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」は多様な意見に触れられるはありがたいのだが掘り下げたものが読みたいと思ったので手に取る。賃上げができないのは、①企業は金融危機を踏まえて内部留保をして企業体質を改善し、不良債権を清算した後でなければ従事者にお鉢が回ってこず、②社内では給与体系にそぐわない専門職を囲うことができず、ジェネラリスト育成のため社外に汎用性がなく、③従業員側も自分の下には強いことができるが上からの変化には膠着姿勢を見せるなどのそれぞれの構造にある問題を指摘する。2017/09/17
christinayan01
1
究極的には企業とは家計還元するものだという意見は労働者としては頼もしい。株主還元と利益の追求とはそのプロセスだということになる。だから、今の過剰な内部留保はすぐやめて賃上げという手段で家計還元すべきだという理論は納得いく。 でもフィリップス曲線を支持している時点でこの先賃金は上がらないと言っているようなものだと思うのだが。デフレなんだから。2017/07/09
S.T
0
企業の内部留保を賃上げにより吐き出させ、需要を回復させること、低所得層は、所得が上がるにつれて子供の数も増えることから、現金給付が少子化対策として有効。2014/04/19