内容説明
〈みずからを低くする態度〉を身いつけ、自分に親密なことばだけを書きつけたヴァルザーの散文小品を初めて紹介。呆けの極限のやさしさ。ユルク・アマン『ローベルト・ヴァルザーの狂気あるいは不意の沈黙』収録。
目次
ローベルト・ヴァルザー散文小品(神経の疲れ;何ごとにも気づかぬ男;トーヴへの演説;とんま;道化者;セザンヌ考;バガニーニ;夜の散策;湖の話;恋人同士;ディアンの女性;スミレの花;あふれる手紙;夫と妻;喝采 ほか)
ローベルト・ヴァルザーの病院生活
ローベルト・ヴァルザーの狂気、あるいは不意の沈黙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
4
カフカが愛読した作家ということで、途方もなくハードルが上がってしまったのか。訳者によれば、カフカは「社会と自己との関係性の喪失」がテーマであり、ヴァルザーは「正常な認識能力の喪失の物語」と分析するが、どうだろう。ナイーブなあまり社会に適応できない「僕」の感傷がつらつら書かれていて、カフカの凄味には到底及ばないという印象ですが。それは「喝采」とそのアレンジ(訳者)であるカフカ「天井桟敷」を読み比べると明らかだ。どこにでもいる現代日本のナイーブな学生が書いた、と言っても通用するような普遍性はあります。2016/04/21
Yusukesanta
0
まず表紙(死んでる!)が素晴らしい。ぽろぽろと粉雪がふっているかの如きやさしい文体で、とてもたわいのないお話しなのだけれど、不思議な滋味が溢れている。で、たしか佐々木敦さんが書いてたかもしれないけど、たぶん中原昌也さんの前世はこの人なのでは、というくらい、とんでもなく似ている。スイス版中原昌也。訳者がアルコール中毒だったというのも、人生、みたいなものを感じさせる。世間とほんの少ししか関わりがない私にも勇気を与えてくれました。2015/03/28
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