内容説明
「暗夜行路」へ通じる静かな哀しみを記した「実母の手紙」、戦後日本がまざまざと蘇える「灰色の月」など、四十二篇を収録。
目次
白い線
実母の手紙
妙な夢
自転車
朝顔
夫婦
衣食住
今度のすまい
耄碌
八手の花
オペラ・グラス
少年の日の憶い出
老廃の身
蓮花話
灰色の月
銅像
鈴木さん
玄人素人
閑人妄語
あの頃
紀元節
猫
動物小品
山鳩
目白と鵯と蝙蝠
雀の話
草津温泉
熱海と東京
尾の道・松江
東京散歩
加賀の潜戸
愛読書回顧
楽屋見物
美術の鑑賞について
赤い風船
首尾の松
ヴィーナスの割目
私の空想美術館
夢か
沓掛にて―芥川君のこと
小林多喜二への手紙
太宰治の死
著者等紹介
志賀直哉[シガナオヤ]
1883年2月20日、宮城県陸前石巻町(現在の石巻市住吉町)に、財界の重鎮・志賀直温の次男として生まれる。1889年、学習院初等科に入学、後に内村鑑三に師事する。1906年、東京帝国大学文科大学英文学学科に入学。1910年、学習院で同級だった武者小路実篤、木下利玄、里見〓(とん)、柳宗悦、有島武郎、有島生馬らと同人誌「白樺」を創刊。同年、東京帝国大学を中退。以後は作家生活に入り、作品を発表。1947年日本ペンクラブ会長に就任。1949年、文化勲章を受章。1971年10月21日死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みけのすずね
7
終戦後、老年期に執筆された短編、随筆、小品。実母や義母、祖父母とのやり取り、動物たちのこと、芝居や絵画観賞、他芸術家との交流…家族たちの記録のような文章や、科学についての考察「閑人妄語」、犬猫雀目白蝦蟇などを描いた動物に関するものが「私には何となくいい感じがした」。「芥川君のこと」についても「背投げを食わすような」ところを評したことなどの交流から、少しばかり生きた芥川君を再現させていただくことができた。2014/12/23
門哉 彗遙
5
志賀直哉の晩年のエッセイ集とでもいうのだろうか。実母に対しての思い、自転車のこと、動植物との関わり、温泉、読書、美術などなど多岐にわたって書かれている。志賀直哉のひととなりがよくわかる随筆だ。2025/03/25
Norikko
4
貸出期間内に読み切れず残念。奥さんの足袋のエピソードは面白かった。手元に置いて時々ゆっくり1編ずつ読みたい。2020/10/11
nickkk
2
頭の良い人間であり、メンタルが強いということがしっかり表れた随筆。「結局一番心易い家内にそれを集注して私はないところに柄をすげ、何か因縁をつけて叱言を言う。家内は窮地に追い込まれ、益々間抜けなことをする。」…よく見る光景だが、(現代に於いては許容できないが)「それが不当であるということは自分でもよく知っているのだ。」と書けるのは並の人間ではない。「行為を憎むというよりもペテンという言葉を憎んだ。」という言葉が心に残った。芥川と太宰は同じ文豪ながら住む世界が違うというのがありありと伝わり、居た堪れなかった。2021/10/08
uchi
2
有名な作品と「灰色の月」と鈴木貫太郎さんの話「鈴木さん」に心うたれました。2018/07/08