内容説明
閉じている扉を開き、新しい世界に導く神、サルタヒコとは、何者か?谷川健一、仲松弥秀、吉田敦彦、鶴岡真弓、中沢新一、細野晴臣ほか各界の第一人者や俊英が「十字路の神」に鋭く迫る。
目次
1 サルタヒコ研究への提言(十字路の神学;サルタヒコ=沖縄からの視座;世界の神話とサルタヒコ)
2 討論 隠された神サルタヒコ(池田雅之;桜井治男;島薗進;鶴岡真弓;目崎茂和;鎌田東二)
3 サルタヒコとは何者か(サルタヒコ書簡;サルタヒコと日本神話のコスモロジー;肖像の起源―王の舞と猿田彦;猿田彦神社の恒例祭典)
4 サルタヒコ動く(甦る「神道感覚」―猿田彦神社遷座祭;対談 音霊の世界を求めて(細野晴臣;鎌田東二))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とし
9
謎の多い神・サルタヒコに関する多角的考察。天孫降臨における導きの神であり、天津神と国津神を接続する神であり、アメノウズメの夫であり道祖神であり渡来神でもあり、天狗的で武神的な性格もあれば庚申講とも繋がりを持つという、まったく掴みどころのないサルタヒコについて、多くの識者が講演や論文(?)や手記や対談といったバラエティーに富む方法で考察したものを集めた一冊。これを読むことによって、人によってはさらにサルタヒコがわからなくなるかもしれない。個人的には細野晴臣氏(元YMO)と鎌田氏の対談が面白かった。2016/01/28
ニシムラサキ
0
筆者14名による多面的な論考。各著者のテーマが違い、混乱を招くが、神話とはそのようなものであろう。私は北沢氏のコスモロジー観が印象に残った。しかしこれだけ高名な学者が揃っても答えがあやふやなのは、何か肝心な要素が欠けているのではないか。ヒントになりそうなことは多々書かれてあるが、分かる人にしか分からないであろう。14名も揃えるなら学者ばかりでなく、山伏や舞踏家の意見を聞きたかったものだ。2014/11/13
しいかあ
0
なんつーか、カオス。みんないってることが違うんだもん。アメノウズメのウズ一つにしたって、ある人はそのまんま渦のことだというし、またある人は蔦を頭に巻いた人のことだという。さらには海蛇のことだという人もいたり。万事がこの調子で、全くまとまりが無い。その中で、橋本裕之の文は、中世の「王の舞」という芸能は、もともとはサルタヒコの神話とは無関係だったということを丹念に解説しており、その上で「王の舞=サルタヒコ神話」という思い込みを前提にした論説をバッサバッサと斬り捨てている。ある意味メタ民俗学といった感じ。2010/05/28