目次
「何の役にも立たない」何か―まえがきにかえて
孤独なイナゴ
われわれが生きている場所
町に鉄の匂いがした時代、あるいは犬の系図
「まる」のいた風景
寺町の情景
同じ過ち
鳥の囀り、クジラの嘆き、死者たちの呟き―あるいは藤井貞和の詩
汗が塩になるまで
それでもおれたちは生きていく
失われた風景
谷川俊太郎と安東次男―あるいは夏と冬の光景
老いらくの探偵が見つけたもの
魂の居場所
古い写真が出てきた
「共和的貧しさ」について
スモールワールド
光る切符
偶然の旅行者
著者等紹介
平川克美[ヒラカワカツミ]
1950年東京生まれ。隣町珈琲店主。早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、翻訳会社を設立、1999年にはシリコンバレーのBusiness Cafe Inc.の設立に参加。2014年、東京・荏原中延に喫茶店「隣町珈琲」をオープン(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
eulogist2001
4
★4.0 めっちゃ面白かった 内田樹とは小学生からの友人。沢木耕太郎は内田樹の兄、徹さんと同じ高校。大滝詠一とは親交があった。村上春樹もよく読む。なんとも羨ましい。 詩作についてはあまり詳しくは無いので、そこは学びとなった。2020/05/22
amanon
3
年を経るにつれ変わってくるものと変わらないもの…著者と同じく長いこと実家を離れていた自分は、後年には、やはり著者と同じように実家に戻るのだろうか?かつての旧友と旧交を温めたりするのだろうか?恐らくその可能性は低いであろうと推察されると、改めてこれまでの自分の人生は何だったのだろうか?とふと考えたくなる。また、著者が引用する夥しいまでの数々の詩に、そこまで詩にのめり込み、自らの人生をそこに投影することができる著者の感性がふと羨ましくなる。あり得たかもしれない人生…そんなことを思ってもしょうがないのだけれど…2021/06/02
ナオヒ
2
ここ数年で読んだ文芸エッセイのなかで一番良かった。詩や小説といった文芸表現が目指している『言葉にできないことを言葉にする』ことや『見えないものに向けて語りかけている人』について書かれた全18章は刺さりすぎて少し痛みすら伴うくらい。やはり言葉の力はすごい。著者は『何の役にもたたない』などと書いているがとんでもない。実はこれこそが人生の豊饒さや渋みなのではないかと。詩をまた改めてじっくり読んでみたいと思った。2020/09/18
のせなーだ
1
日々の生活に詩があるんですね。失われた年月は一体どこへ、過去の場所はずっと心に残っているけれど。朝から夜まで仕事で不在の父親と、家で働く近くに見える父親との距離感を思う。どんな関係だったにしろ介護の体験の有無は大きいし特別だ、常に至近距離、人間関係で最も密だ。喜んでもらえたら気持ちがいい。死に近づいていく人間の介護の間は自分のことは忘れているから、いざ逝かれたら後悔や喪失感、ストレスの結果など予想もできないほどだ。できるものならやり直したい介護。日々、何か少しだけ見ているような小さな世界が自分の日常かな。2020/08/30
くろすけ
1
エッセイの中で、多くの詩が紹介されている。著者が出会った詩が、生まれ育った場所・時代、見てきたもの・感じたことにシンクロしていることに驚く。確かに詩は、うまく言葉にできない情景や心情を代弁してくれることがあるのだと思った。2020/05/28