出版社内容情報
『落ちぬ椿』の著者が描く、江戸の菓子屋の美味で切ない物語! 社交的な兄と不器用な弟が営む深川の小さな菓子屋「二幸堂」。美味しい菓子が心を癒し、人と人を繋げ、希望をもたらす――。極上の時代小説。
内容説明
「餡子だけじゃつまらねぇ。菓子を作れよ、孝次郎―」深川で菓子屋「二幸堂」を始めた兄・光太郎と弟・孝次郎。ほんのり甘酒香る薄皮饅頭「斑雪」、桜の花弁を模した上生菓子「恋桜」、黄身餡が贅沢な「天道」と十四夜の月の如く控えめな甘さの「幾望」、柳の青葉が風情涼やかな錦玉羹「春の川」、薄紅色の白餡大福「紅福」。―不器用な職人・孝次郎の作るとびきりの菓子が、人と人を繋げ、出会いをもたらし、ささやかな幸福を照らし出す―。江戸の菓子屋を舞台に描かれる、極上の甘味と人情と、つたない恋。兄弟の絆と店を支える人々の温かさに心震える珠玉の時代小説!
著者等紹介
知野みさき[チノミサキ]
1972年生まれ、ミネソタ大学卒業。現在はカナダBC州在住。銀行の内部監査員を務める。2012年『鈴の神さま』でデビュー。同年『妖国の剣士』で第四回角川春樹小説賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あすなろ
97
ほら、こうして見ると、まるで月夜の斑雪。斑雪とは、斑らに積もった雪の様。そういう思慕寄せる女性が心の中に在り続ける和菓子職人は、弟想いの兄と和菓子屋を開く。何も難しいところはない時代小説だが、この斑雪が醸すの印象が読了強く残る。奥様の図書館本より。知野氏の作品は初読みだが、米国大学卒で現在もカナダ在住で銀行の内部監査員を務められている方と聞いてそれも驚き。春樹小説大賞も受賞されているとのことでお名前を覚えておきます。2018/02/04
のんちゃん
86
江戸深川で兄弟二人で菓子屋二幸堂を営む光太郎と孝次郎の兄弟愛とそれぞれの恋と町中の人情物語。お話の面白さはもちろんのこと、作中のお菓子の美味しそうなこと、この上ない。読書中、思わず和菓子屋さんに金鍔を買いに行ってしまった!私は作家さんに対しては浮気者でなかなかシリーズを続けて読めないのだが、知野先生の作品はシリーズを楽しみにしてしまう。今作もシリーズ化になったらやっぱり追ってしまうんだろうな。因みに今作では二幸堂の従業員お七さんが物語のある意味、要だと、興味深く読んだ。2018/06/18
もんらっしぇ
79
続編が出ていて読み始めたところ、巻頭に珍しくも“あらすじ”が。これは助かる~と思いつつ結局再読w 男兄弟二人の菓子屋物語。あれ、どこかで読んだような。そう、田牧大和さんの「藍千堂菓子噺」と対比せざるを得ないですよね。(西條奈加さんの「まるまるの毬」&続編はちょっと設定が異なりますか) ともあれ意識せずに勿論楽しめました。主人公/弟の孝次郎の火事を廻っての兄弟の因縁・父との確執。不器用な故での恋愛模様。お相手の女性も訳アリですね。クライマックスに向かう筋書きも良し。で次巻に続く~2019/10/30
タイ子
73
役者にしたいようなイケメンの兄と無口でシャイな弟が営む小さな和菓子屋。作るお菓子の種類は少ないものの、餡子の味は日本一。お店を手伝うお七がこれまた無類の饅頭好き。 そんなシャイな弟、幸次郎が恋をした。相手は以前吉原で出会った女。途中別の女も入ってきたりして焦れるわ~。恋をすると菓子作りの技も冴え種類も増えてくる。現代でもそうだけど和菓子の名前でついそそられて買っちゃうことあるけど昔もそうなんだね。何気ない日々の営みの中で兄弟が作るお菓子の甘さが恋も失恋さえも温かさをもたらしてくれる。シリーズ化するのかな。2018/02/03
ぶんこ
66
設定が田巻さんの作品と似ていますが、こちらも楽しい作品でお気に入りになりました。仲の良い兄弟に、あんこ大好きなお七さん。3人の仕事場の雰囲気が読んでいてほっこりします。吉原出を隠さない暁音さんも素晴らしい。上品な練り切りよりも庶民的な和菓子が好きなので、私も常連客になった気分で読みました。2018/09/17