内容説明
「空」の思想を論理で把えた『中論』を、聖と俗の関係性より解釈する。明らかに論理を超えると思われるものを論理によって把えようとする龍樹の追求をどのように跡づけることができるのだろうか。問い続ける私にヒントになったのが宗教学者たちから提示された「聖なるもの」と「俗なるもの」という2極からなる「水平」であった。この水平はふつう集団的宗教行為の様相を明らかにするために用いられるものであるが、「俗なるもの」から「聖なるもの」への歩みは個人的宗教行為においても同じであり、個人的宗教行為の特徴を備えた大乗仏教の空思想の考察にもこの水平は有効なのではないか。
目次
第1章 『中論』における「聖なるもの」と「俗なるもの」(『中論』の歴史的位置;『中論』の思想的位置;『中論』における世俗と最高真理)
第2章 「空」の構造(「俗なるもの」の構造;「俗なるもの」否定;「俗なるもの」から「聖なるもの」へ;「聖なるもの」から「俗なるもの」へ;「俗なるもの」の聖化)