感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
肉尊
25
諸子百家の思想を体系的に説明している良冊。よく孟子の性善説と荀子の性悪説を二項対立で捉えがちであるが、それは西洋的発想である。東洋(なかでも中国)においては善の欠けたる状態が悪なのであって、不足している状態と考えてもよい。政治的に不安定であった戦国時代にあって、戦いはすぐに決着できるものではなく、政治・経済的な視点からも、諸侯は国家の運営に参与する逸材を求めていた。その需要に応えるかたちでの百家争鳴であり、筆者は「無秩序による自由」がそうさせたと考えている。(p213)2021/12/07
wiki
15
中国思想の概論。非常に纏まっており、良書。中国で論理学が発達しなかったのは述語のない言語的制約が大きいそうだ。また「中国にとっての不幸は、儒教という一つの教えが、二千年の長きにわたって思想界を支配したという事実」と切るのはすごい。価値観を崩す一言だ。「思想は何よりも自由を要求する。強力な王朝支配の下では、真に生命のある思想は生まれない。戦国時代や六朝時代は分裂の時期であり、政治的には暗黒の時代である。それにもかかわらず、豊かで多彩な思想が生まれたのは、そこに無秩序による自由があったためにほかならない」と。2020/05/21
きさらぎ
8
中国思想の通史。中国思想の特質を概観を述べた後、思想史としては諸子百家と秦の法家思想までを扱う。新書で価格的にも値段的にもお手頃で、尚且つ文章は平易で読みやすく判りやすい。新しい分野に手をつけようとするときにこういう本が存在するのは非常に有難い。「孟子の性善と老荘の自然に対抗した荀子」「無の哲学の始祖老子と完成者としての荘子」の扱いが特に興味深かった。墨子に関しては以前に読んだ湯浅氏の『諸子百家』の方が詳しい。名家・陰陽五行・雑家などは湯浅氏では触れられていなかったので本書で学ばせて頂いた。下巻が楽しみ!2017/04/19
YoW
4
中国の思想の大半が現実を重視している理由として、文化を独占してきた階級が官吏であった事が挙げられている。文化を独占するというのは思っても見なかったのでこの辺りを読めただけでも価値があった。思想を生む背景から諸子百家の思想まで概説してくれる良書。下巻も楽しみにしたい。2021/02/09
ten304
4
上巻は春秋戦国に興った諸子百家の思想。簡潔で分かりやすい。孔子の辺りは思ったよりもあっさり。儒教や道家など、あまりに非現実的では無いだろうか?という疑問点に対して、それを補う方法について各思想の考え方が説明されていたのが有り難かった。同じ学派でもそれぞれに特色があって面白い。中国思想が目的でしたが、西洋との違いについて知るうちにキリスト教やイスラム教など一神教についてもまた興味が湧きました。2016/03/26