出版社内容情報
「言語の教育」と「文学の教育」の狭間で揺れ動いてきた戦後の国語教育における文学の扱いの変遷を丹念に検証。今後のあり方を問う。
内容説明
「論理国語」「文学国語」はなぜ生まれたのか。世紀の大改革といわれる高校国語の科目再編。その背景には、戦後の国語教育の歩みの中で繰り返し論議を呼んできた、「言語の教育」と「文学の教育」の相剋があった!
目次
第1章 戦後初期の国語科は何を目指したのか―言語教育という黒船
第2章 戦後国語教育は文学に何を求めたのか―文学の鑑賞と人間形成
第3章 文学教育はどう展開したか―文学科を求めて
第4章 文学教材の指導はどのように確立したのか―高度経済成長と読解指導
第5章 定番教材はどう読まれてきたか―「羅生門」「走れメロス」「ごんぎつね」
第6章 国語教育はどのように変化を迫られたか―知識基盤社会の中で
著者等紹介
幸田国広[コウダクニヒロ]
1967年、東京都生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。博士(教育学)。国語教育史学会運営委員長。NHK高校講座(Eテレ)「国語表現」番組委員(監修・出演)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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terve
37
令和四年度から、高校でも新しい学習指導要領が施行されます。科目の再編で「論理国語」「文学国語」と科目が出てきましたが、その科目が設置された理由について、文学の扱われ方から紐解いた一書。文学を教育することと、文学を楽しむことはやっぱり違うよな…と思いつつ、定番教材がなぜ定番になったかという点はやはり面白いです。とはいえ、授業の記憶はほとんど無く、勝手に読んでましたね。2022/01/23
虎哲
4
タイトルに掲げられた問いについて戦後75年を振り返り、「これから」の国語科教育及び文学教育を考えるための土台を築いた国語科教員必読書。個人的に興味深かったのは定番教材の成立を描いた第五章。定番教材は「少子化と同質化」によるものとの指摘は圧巻だ。この「同質化」を生み出す現場における「慣習性の強度」に負けぬ実践を展開するためにこの本で「これまで」を学んでおく必要がある。この本が「高校生Aさん」の「問いかけへの応答」であり、「自粛の対価」であることは国語科教育の「これから」を拓く本の成立としてあまりに文学的だ。2021/12/20
skr-shower
2
他地区図書館本。パラパラと。国語は不思議な教科。テストでは道徳的に正しい事を選ぶと正解だし、感想文を書けと言うのに書き方の指導はない。文学作品の鑑賞と言っても明治の我がままモラトリアム青年の恋愛の悩みだったり、解説文の読解はできるようにならない。指導要領詰め込み世代としては、教科書作る会社も先生も頑張れとしか言えない…2022/05/04
takao
0
ふむ2025/06/24
ozean-schloss
0
2022年から始まる新課程高校国語、特に「論理国語」「文学国語」について、その教育史的な背景を丹念に追った良著。筆者はやや新課程国語に対し肯定的な立場だが、新課程国語に批判的な方でもこの本は通読していただきたい内容。 星4。 新課程国語について煽情的な批判が多い中、冷静かつ丁寧に先行研究を押さえており好感が持てた。 ただ、筆者が新課程国語(共通テストの記述問題)の当事者にも拘らず、あたかも無関係かのように書いている点は残念。本書にて疑惑について説明はしておくべきだった。2021/09/10