内容説明
この本では、現存する国策紙芝居の中から代表的な作品を選んで掲載し、その作品に対する現代の大学生と留学生の論議を紹介します。若者が現代の視点から戦争プロパガンダである国策紙芝居を見て、何を感じたのか…読者のみなさんも若者の論議に参加して、共に考えてみませんか。
目次
『フクチャントチョキン』―さあ、戦争をはじめよう!
『挙骨軍曹』―勇敢な日本兵、卑劣な支那兵を打ちのめす!
『チョコレートと兵隊』―優しいお父さんが戦死なさっても…
『ガンバレコスズメ』―かわいい小雀も戦争のお手伝い
『花咲かせん』―ガダルカナル島の英雄に続け!
『櫛』―日本の兵隊が強いのは、母の愛があるからです
日本の大学生と留学生の戦争論議―違う立場から歴史を見ることができて、大変おもしろかった
平和紙芝居の空白部分
国策紙芝居の戦後改変
講義の後のつれづれ話
著者等紹介
鈴木常勝[スズキツネカツ]
1947年生まれ。日中現代史研究者。紙芝居師。大学講師として「現代アジア事情」「中国の文化」などを担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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更紗蝦
16
戦時中に国民を戦争に動員する目的で作られた国策紙芝居の内容を紹介しつつ、その国策紙芝居を読んだ大学生の感想も載せている本です。「戦争プロパガンダ」と「現代の若者の戦争認識」を同時にテーマにしているため、掘り下げ方が足りないと感じる部分もありますが(例えば、『チョコレートと戦争』という作品は明らかに製菓会社のイメージアップ戦略の側面があるので、マーケティング論の視点での考察が必要です)、紹介されている一つ一つの紙芝居は戦時下体制の実態を知る上でとても貴重な資料ですし、問題提起としての意義も大きいです。2016/01/20
紅独歩
3
紙芝居というと戦後、というイメージが強かったのだが「国策」としてこれほど積極的に活用されていたことに驚いた。敗戦とともにそのほとんどが焼き捨てられ「無かった事」にされたのだ。臭いものに蓋をしたがるのは、今も昔も同じ。戦争にどう係わっていたのか、検証することは難しい。国とか政治家ではなく、庶民レベルとしてはなおさらだ。しかし、そこからを目を逸らしてしまうと、容易く同じ轍を踏むことになりかねない。他国民がどうだったか、よりも自国の人々がどうだったかを、より広い視野で知ることはとても重要だ。2013/02/24
Tkc Knk
1
後半2章は、なかなかの切れ味。田中丸勝彦の「さまよえる英霊たち―国のみたま、家のほとけ」や、重信幸彦の「みんなで戦争 銃後美談と動員のフォークロア」などと併せて読むと、面白さ倍増。2019/09/28
amabiko
1
大学生たちが、国策紙芝居を通じて、戦争とプロパガンダを考える。イマドキの大学生のなかに、思っていた以上にしっかりした意見を持つ人たちがいることに少し安心。2011/07/05
晩鳥
0
子ども向けの紙芝居というメディアまで戦争プロパガンダに利用され、あらゆるものが戦争遂行のために動員されていたんだなということを感じた。2019/09/08