内容説明
サルからヒトへの進化の過程で、ことばはどのようにして誕生したのか?発達過程で子どもたちはどのようにしてことばを身につけるのか?これら言語研究のコアとなる難題について、サル学、子ども学のエキスパートである生物学者と脳とこころとの関係からことばを研究してきた認知科学者が検討を加える。
目次
第1章 生物の進化からことばの起源を探る(サル学からわかること;言語と遺伝子 ほか)
第2章 ヒトの行動・認知・発達とことばの関係(ヒトの言語能力の成り立ち;模倣から共感へ ほか)
第3章 ことばの変化(社会生活とことば;コミュニケーションの変化)
第4章 ことばの科学に求められるものとは何か(理論言語学の場合;言語行動分析の場合 ほか)
著者等紹介
正高信男[マサタカノブオ]
1954年生まれ。大阪大学卒業。大阪大学大学院博士課程修了。学術博士。現在、京都大学霊長類研究所教授。専門は認知神経科学・比較行動学・霊長類学
辻幸夫[ツジユキオ]
1956年生まれ。慶應義塾大学卒業。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。現在、慶應義塾大学教授。専門は認知科学、意味論、言語心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
181
言語の獲得について、霊長類を専門とする生物学者の視点から切り込む話であるが…最近の風潮であった生成文法研究への批判色が強くあまりこの分野からの発見については書かれていない。赤ちゃんの発話や障碍者の発話など、興味深い話題もあるがこのアプローチだと人間固有の高次機能について言及するのが難しいのか。参考になる部分もなくはないが、興味を引く話題は多くなかった。対談集は読みやすい点もあるが、もっと詳しく深堀してほしかった。2020/07/06
9rikaz00
4
人間の認知について、言語を中心に対談集。対談形式だとエピソード披露みたいなの増えて読むぶんには楽しい2018/10/12
じいふう
4
★★★生物学のアプローチから言葉の起源を論じる正高信男氏と認知科学の立場の辻幸夫氏の対談集。正高氏がチョムスキーの生成文法論をボロクソに批判しているところが面白かった。また以下が印象に残った。印刷技術が発達する以前は写本の世界で誰がオリジナルかは問題になっていなかった。インタネット時代のコピペ文化もまたオリジナルが誰かということは気にされない。コピーライト、ある個人がいてその個人が主張する内容がどれだけその個人に帰属するとか、独自のものであるということが問題になったのは一時のことだったと後世言われるかも。2011/11/11
清水勇
3
認知科学専門家による言語の起源についての対談。難解な言葉が多かったが印象に残ったのは、赤ちゃんが言葉を発する前段階での母親との双方向のコミュニケーションの重要性。赤ちゃんは無力の状況から言葉を認識し自分の口で発するまでに、母親からの大袈裟なジェスチャー、抑揚が大きく繰り返される話しかけや触れ合い、溢れる笑顔等々により、赤ちゃんの脳の各部位間のネットワークが構築され言語能力を向上させることに感動。更に聾の方が手話で話す際、脳の聴覚野ではなく視覚野が活性化することは、人間の言語獲得の秘密を示していると思えた。2021/03/17
海月
2
脳には可塑性があり、あらゆる状況(欠損・障害など)に柔軟に適応する。脳の言語機能はある箇所に特定出来ない。生物の進化と同様に言語もご都合主義なのでは(言語は理路整然と一本道のように整理できるものではないのでは?)という主張。アンチ生成文法。手話の話も面白い。2017/12/06