出版社内容情報
「水」をキーワードに、広くユーラシア全体にわたる具体的な神話の姿を紹介しながら、各地の創世神話の共通点と相違点を考察する
内容説明
聖書、ギリシア、ケルト、北欧など西方世界の神話も、インド、中国、東南アジア、東アジア、シベリアなど東方世界の神話も、ユーラシア各地の創世神話は、すべて古代メソポタミアの「生命の水」の神話を起源としている。本書は、各地の洪水伝説や羽衣伝説を始めとする生命の水の神話を紹介しながら、その系譜を探る壮大な試みである。
目次
第1章 聖書の世界―「水」のイメージ
第2章 インド・ヨーロッパ語族の世界
第3章 ギリシア・ローマ神話の世界
第4章 ケルト神話の世界
第5章 メソポタミア神話の世界―水神エア・マルドゥク父子の事跡
第6章 ユーラシア大陸にメソポタミア神話の余波を追う
第7章 人類創造と洪水神話(ヨーロッパ編)
第8章 羽衣伝説と洪水神話(アジア編)
第9章 中国神話とメソポタミア神話の類縁性
著者等紹介
金光仁三郎[カネミツジンサブロウ]
1941年東京に生まれる。1966年東京大学文学部仏文科修士課程修了。中央大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koning
18
メソポタミアからユーラシア大陸の各地に神話が伝播していったというお話。ただ、論文ではなく一般書だからか、強引なこじつけもかなりあって話半分にという感じかなぁ?実際古代シナの象形文字がシュメールの初期の象形文字から来たんじゃないか?説は19世紀の昔から唱える人はそれなりにいたし、古代人の文化の伝播の力は我々の想像する以上に凄いのでそういう意味では説得力はあるのだけれど、とにかく「なんとなくこれ似てるでしょ?」なノリなので(笑)どうしても胡散臭くなっちゃうというか(汗。西アジアから東地中海の文化の(続く2015/03/02
Oltmk
1
ユーラシア大陸に伝わる各地の神話はメソポタミア神話に繋がっているという筆者の姿勢は判るのだが、中国神話の所で自らの学説と神話のモチーフの繋がりを証明しようとするあまり本当に白川静の「中国の神話」を読んだのか疑問に思ってしまう所が出てくるなど、モチーフを繋げようとするあまり一方の属性を一方に創作してしまう比較神話学で陥ってしまう罠に陥ってると実感してしまう。もっと中国神話を知って学説を述べたいのなら伊藤清司氏と吉本道雅氏の著作と論文を読んでもらいたいです。2020/06/06
misui
1
ユーラシアの神話の淵源はメソポタミアにあるとして、各地の神話にどのような形でそれが表れているかを検証する。天上覇権神話、創造神話、洪水神話、不死神話、羽衣伝説などを水の神話素に注目して読み解いていくとメソポタミアの水神エアの周辺に収斂していくのですが、ちょっと論の進め方が強引かなという気はする。とはいえこの伝播の様態は一面の真実でもあるのでしょう。メソポタミアの後日譚をプロメテウス神話に読み取り、そこから聖書へ流れていくというのは面白かったです。これから神話を読んでいくにあたって取っ掛かりになりそうな。2010/03/29