出版社内容情報
印欧語の中で大きな文法的役割を果たしている「数」について、双数を中心に、ギリシア・ローマをはじめとする古典の中に探った滋味深い好著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
24
英語の単数・複数に困った中学生時代を思えば、2個のものに「双数」という別の形がある言語もあると聞いて、思わず叫びたくなる(笑)。印欧語の双数形はしだいに衰退するものの、荘重さをねらってギリシャ古典には効果的に使われたという。「数の現象」は、数学とはちがった、生の人間感覚が効いているようだ。ラストの「補説」は、数詞の数学史的論考で、実はここを一番興味をもって読んだ。2016/02/14
もみじ
0
単数、複数の2つによる単純な構成と考えられがちな印欧語の数の現象を、双数、複個数といった特殊な形態を中心に解きほぐしていく。 「2つ」や「沢山」という漠然とした捉え方をしていた双数、複数の中にも厳然たる機能の区別がある事が古典作家の文芸作品を例に解明されていく手順に知的好奇心が大いに満たされた。 外形的な要素に留まらず、作者の心理という内面的な部分にまで考察が及ぶのが本書の特異な点だろう。当人は既に故人であるため考察の正しさを証明する術はないが、このような態度は言語一般について考える際の大きなヒントになる2021/05/20