出版社内容情報
コロナ禍を経て、日本に在留する外国人の数が400万人近くにまで急増しています。すでに日本は事実上の「移民社会」であり、外国人がいなければもはやこの国の経済・社会は成り立ちません。しかし、政府はこの事実を直視することを避け、労働力として外国人を一層利用しようとする一方で、頑なに「移民は受け入れない」とする方針を改めようとしていません。こうした政府の姿勢は、社会の中にあるレイシズム、民族差別や人種差別を助長する役割を果たし、ヘイトスピーチやヘイトクライムを生じさせてきた大きな要因であることは否定できません。
これに対して国内外から批判の声が高まり、一昨年、昨年と入管難民法をはじめ関連法が改定されました。今号の特集は、外国人もしくは外国にルーツを持つ人々との共生をめぐり、この国はどこに向かおうとしているのか、現状を検証しながら多民族が共生できる社会を創るための課題を明らかにし、その解決を探るものです。
その際、一般に注目されがちな「ニューカマー」をめぐる問題だけではなく、日本の侵略・植民地支配に端を発する「オールドカマー」の在日コリアンや台湾人をめぐる歴史や、今日に至るまでの問題についても取り上げました。とりわけ在日コリアンに対して戦後、入管体制として制度化された監視・弾圧・追放政策が、今日に至るまでの民族差別的な入管行政の根底にあることは強調されるべきと考えています。