内容説明
本所・松坂町に暮らし、三味線の師匠として活計を立てている岡安久弥。しかしひとたび刀を握れば、鬼神のごとき戦いぶりを見せる一刀流の使い手だ。大名家の庶子として生まれ、市井に身をひそめ孤独に生きてきた久弥だが、ある転機が訪れる。文政の大火の最中、幼子を拾ったのだ。名を持たず、居場所をなくした迷い子との出会いは、久弥の暮らしをすっかり変えていく。思いがけず穏やかで幸せな日々を過ごす久弥だったが、生家に政変が生じ、後嗣争いの渦へと巻き込まれていき―。アルファポリス第8回歴史・時代小説大賞大賞受賞。
著者等紹介
笹目いく子[ササメイクコ]
1980年東京都生まれ。米国在住。2022年、アルファポリス第8回歴史・時代小説大賞にて『調べ、かき鳴らせ』が大賞、『深川あやかし屋敷奇譚』が特別賞を受賞。2024年、『調べ、かき鳴らせ』を『独り剣客 山辺久弥 おやこ見習い帖』に改題し出版デビュー。本格時代小説からコミカルな怪異譚まで幅広く執筆する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マツユキ
18
ある事情で孤独に生きる三味線の師匠、久弥は、大火の混乱の中、一人さ迷う少年を保護するが…。この粗筋、好きなやつだと思い始めていましたが、想像以上に濃いバトルで、ハラハラドキドキ。三味線に馴染みはないですが、その世界の豊かさが伝わってきて、読み応えがありました。複雑な境遇の中でも思い合い、または見守る人々の熱い涙に感動。ハッピーエンドを願う喜びってあるよねと思わせてくれる読書でした。2024/12/27
ごへいもち
12
読友さんのご紹介本。面白かったけれど好みから言うと後半はちょっと甘いかなぁ。2025/01/17
clef
1
文政の大火の中、幼子を拾った久弥。青馬と名付けて共に暮らすようになる。抱えた孤独と切なさが通じ合い、揺るぎない絆が編まれていく過程と、決して叶うべくもない希いに葛藤する各人の想いに幾度となく涙。素晴らしかったです。
立藤夕貴
1
歴史小説は読まないのですが、気になって手に取ってみました。出自やしがらみに翻弄される久弥と青馬。二人が出会い、関係を育んでいく姿がとても素敵でした。琴について丁寧に描写されていて、調べが聞こえてきそう。静謐な雰囲気の中にあたたかさを感じます。穏やかな時間は束の間で、久弥が懸念していた通り生活は一変。どうにか幸せになってほしいと思いながら、先を読み進めました。皆が自身の生まれや境遇に翻弄され、時には諦観を抱き、諦めきれずに前に進もうと足掻く。そんな姿にじんわりと涙が滲みました。2024/08/06